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五百羅漢が 鬼才村上隆によって現代に蘇る | 村上隆の五百羅漢図展

村上隆の五百羅漢図展
2015年10月31日(土)― 2016年3月6日(日)
森美術館
http://www.mori.art.museum/contents/tm500/index.html

この五百羅漢図展、2015年の夏、ご縁があってるるぶ.comに原稿を書かせていただいたのですが、今日やっと、観に行く機会を得て行って来ました。展覧会の概要については、こちらでまとめさせていただいてますので、ご一読くださいませ。
http://www.rurubu.com/season/autumn/art/column.aspx
「五百羅漢が 鬼才村上隆によって現代に蘇る」と題して書かせていた立たのですが、全長100mにもおよぶ現代に蘇った五百羅漢が繰り広げる白虎、青龍、玄武、朱雀と続くビビッドな仏教世界はまさに圧巻でしたっ!! 村上展らしく、撮影OK、SNSにアップOKと言う事で写真に収めようとしたのですが、これはそれではつまらないな、と思い、拙い動画で撮って参りましたし、そうした人も多かったのではないかな、と思います。



スーパーフラットの提唱者である村上隆が実は芸大の日本画科の出身で、日本で初めて日本画の分野で博士号を取得したというのはご存知の方も多いと思いますが、日本画の分野のひとつの仏画で用いられるモチーフが登場するという事以外、メディアも表現方法も何もかも、所謂日本画とは一線を画していて、狩野派とか、土佐派とか、琳派とか、(近代の流派は良く解らないのですが)、そんな風に、村上派を確立した創始者とその地位を確固たるものにした記念すべきものになったのではないでしょうか。 これほどの大規模展示は、規模だけで語っても、そうそう実現するものではないような気がします。
村上隆について、あの作風を見て、あれがアートとか芸術とかいう類のものなのだろうか、と感じる人も多いかと思います。それは、ピカソのキュビズムの画を見て、「あれなら自分も描ける」と思うメンタリティーと同じのような気がします。 描かれているモチーフの中にはDOBのようないかにもキャラクターっぽいものも含まれてはいますが、それを埋めている色彩の乗せ方、配色、レイアウト、構成、どれをとっても唸るほど精緻でかつ感覚的、なようでいて実はかなり計算しているのかもと思わせる匠な要素が満載です。 一度でも絵筆を取って絵画なり、イラストなりを制作した経験がある人なら、村上隆という人の溢れる才能のようなものを、そこに見て取る事が出来ると思います。 これは、好きとか嫌いとかの話ではなく、確固たる確立された芸術家としての技量なのだと思います。


《達磨大師》 2007年
アクリル、プラチナ箔、カンバス、板にマウント 1601×3510×50mm(六曲) 個人蔵
Courtesy Blum & Poe, Los Angeles
(これって、私が初めて村上隆をきちんと芸術家なのだ、と認識した達磨大師。)


そして、縦横無尽のごとく繰り広げられる独特の仏教世界はどんだけの想像力の広がりがあれば描けるんだろうかと、その創出するエネルギーの大きさはものすごいものだな、と感じた訳です。まあここで、「あれって沢山の学生使って描いたんでしょ」という意見も出そうですが、実は第3者、人の手を使ってなお、完璧に仕上げるのは、全て自分でやるのより遥かに難しいと、様々な分野で経験したことのある人は、それに気が付くと思います。 「村上さま ご指示どおり」とか書かれた指示書というか、設計図みたいなものが沢山展示されていましたが、それも興味深く拝見してきました。 とにかく、大勢の人の手を使って仕上げられているのに、細部に渡って適当にされている箇所が全くないのは圧巻です。 なぜ細部を写真に撮って来なかったのか、今となっては悔やまれますが、マーブル模様のように仕上げられたその画面の色彩はとにかく美しかったのです。

村上隆のファンの人はもちろん、懐疑的な人でも、ここまでの大作を描き上げる環境が整って、これだけのものが展示できる場があって、そんなものを観られる機会もそうそうないと思うので、是非その眼で観てみたらいいんじゃないかな、と思います。




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by sanaegogo | 2016-02-12 00:00 | art


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