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Todd Hidoに出逢う @Post 恵比寿
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『こんな写真に出逢えてよかった。』と思える幸せな瞬間が時々あるけれど、Todd Hidoはまさにそんな気持ちでストレートに胸を打ち抜かれた、そんな感じの出逢いです。 自分が知っている写真家は、世の中で一握りだと自覚しているけど、それならばこの先、こんな出逢いがまだまだ何度も訪れるのかと思うと、期待で胸が膨らみます。
Todd Hidoはアメリカで現代写真家を代表する写真家で、日本での紹介は初めて。派手な露出はなけれどクオリティーの高い優れた国内外の作家の作品にスポットを当て、静かに粛々と紹介しているギャラリーPost(恵比寿limArt)で展示されていて、彼のこれだけまとまった作品が日本で紹介されるのは初の機会だそうで、今回は今年「Nazraeli Press」より出版された作品集『Excerpts from Silver Meadows』より20点が出品されています。

Exhibition [Todd Hido]
会期: 2013年8月13日(火)〜9月1日(日)
会場:POST (limArt co.,ltd.)




写真展は大きくふたつの要素から構成されていて、夜や夕方、曇天のもと撮影されたどこの風景とも知れない片田舎の風景と、薄暗い簡素な室内でこちらに真っ直ぐな視線を遣っている印象的なポートレートから成っています。 風景の写真はあくまでもひと気がなく、どこまでも静かで、音もないというよりは、頭の片隅に静けさがしーーんと音を立てている感じすらします。 夜の静けさの中に佇む家、車の運転でもしているのでしょうか、進む先を描き出している田舎道、その視線の持ち主は紛れもなくトッド・ハイド自身であり、彼の車で寒い夜、車であてもなく空虚なドライブを続けているような、そんな気持ちにさせられます。 それが何処となくロードムービーのように思えてきて、画面は常に静かでありながら、どことなく時間の流れを感じさせます。 トッドの視線に准えてトッドの視る世界の中で旅をしているかのようです。 実際彼は車のウィンドウやフロントガラス越しにシャッターを切ることが多いそうで、その目には見えないガラスの隔たりが、戸外の雨や雪の粒子と合間って風景に微妙な滲みや歪みを与えていて、それが本当に印象的でここだけにしかない世界観をかもし出していました。 『空気感』という言葉がまさに相応しい情景です。 写真に写る風景は画面に閉じ込められ、そこで止まっているのですが、時間の流れまで写し撮っているかのような情景です。
そんな静寂の風景とは対照的に散りばめられていたのが、無名のモデル達を写したポートレートのシリーズです。風景のひと気の無さとは対照的にそのまっすぐにこちらを見据える視線にはいいようもない意志の強い存在感が溢れていて、風景写真と強いコントラストを描き出していますが、そこにもまた静寂が横たわっている事には変わりありません。 物言わぬ無口そうな女性達は、その寡黙さゆえに彼女達の心の中を図り知る事は出来ないような気がして、風景の写真とは趣を異にしていて、観る者の感情移入さえ拒んでいるような気がしました。 まるで傍観者になるしかないなのです。
トッド・ハイドの写真は、Postの雰囲気にもとても良く合っていて、まるでずっとそこにそうやって飾ってあるかのように良く馴染んでいました。 夜に観に行ったのも良かったのかも知れません。 今はアレック・ソスの作品が飾られていると思いますが、部屋の片隅や奥の壁にトッドの写真の面影を感じてしまうかも知れません。
観に行ってよかったです。 Todd Hido 心に深く刻み込まれてしまった感じがします。

Todd Hido Official Site: http://www.toddhido.com/



≪参考≫
http://www.houyhnhnm.jp/culture/news/todd-hido.html
http://antenna7.com/artdesign/2013/07/todd_hido.html
http://openers.jp/culture/tips_art/news_todd_hido_38505.html





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by sanaegogo | 2013-08-27 00:00 | art


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