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Utrechtで「とり。」展
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吉楽洋平さんの「BIRDS」は、今年の写真新世紀で優秀賞を受賞した作品です。そのシリーズとなる『とり。』がユトレヒトで開催されてます。当初は12月23日までの予定でしたが、好評につき会期が27日まで延長されたそうです。 静かなるムーヴメントですね。

吉楽洋平 「とり。」展
2012.12.11(tue) – 12. 23(sun) 27(thu)
Utrecht/NOW IDeA

ユトレヒトのテラスにあった東屋は、森の中の小さな小屋みたいで、まるで今回の吉楽さんのために作ったスペースのようになっていました。こちらがその中で森で囀る鳥を見る小屋のようでもあり、鳥達が寛ぐための鳥小屋のようでもあり。床には一面に木の葉が敷き詰められています。これは吉楽さんが展示が始まる朝に大きなビニール袋7袋分掻き集めて来たそうですが、全部は使わなかったそうです。(因みにこのスペースは、この吉楽さんの展示をもって取り壊される予定だそうです。本格的なカフェスペースになるのかな?) 木の葉を敷き詰めたり、鳥の囀りが聞こえたり、スペース自体も趣向を凝らして空間全体でみせるのがとってもいい感じでした。展示してある写真については、ご本人は、『迷ったけど小さくした』と言っていましたが、写真の展示にしては、なるほど、ちょっと小さめ。でも、その分、本当に、木々の間でその枝葉に溶け込んでいる鳥たちの世界に入り込んだような気分になって、スペース内は狭いながらも自然と無意識に鳥を驚かせないようにそろそろっと歩いてました。空間全体で『とり。』の雰囲気づくりがが効果的に表現されてました。写真展も壁に写真を並べていくだけでなくて、こうやってスペース全体で表現されていると楽しいですよね。
吉楽さんのこのシリーズは写真新世紀の「BIRDS」でも観ました。残念ながらグランプリは逃してしまったのですが、私はお世辞抜きで、「BIRDS」が一番いいな、と思ったのですが。(ユトレヒトで、これを本人に言うと、『僕もそう思います。』と言ってました。) 最近の写真新世紀は、佳作も含めて優秀賞に入った写真を観ても、大御所や今旬の写真家は勿論のこと、写真仲間や自分の身近な人、必ず誰かっぽいと言う分類が出来るような(出来てしまう)ような気がしました。 そんな中で、吉楽さんの写真は誰にも似てない、誰っぽくもない、感じがしたんです。これは紛れもなく、吉楽さんのオリジナルだ、と。 そして、写真も綺麗。『綺麗』と言う言葉は無難に使われる賞賛の言葉のように思われるかも知れないですが、本当の『綺麗』と言うのは実はそんなに薄っぺらい言葉ではないのです。写真新世紀のグランプリ選出の公開審査会を観に行ったと言う友人は、その制作意図として『ある日蚤の市で一冊の鳥の図鑑を手に入れた。本を開くと鳥の絵が切り抜かれたページがあることに気付いた。それは私に空っぽの鳥籠をイメージさせた。するとその本自体が一つの鳥籠の様に思えた。「残りの鳥を放つこと。」そんな言葉が本から発せられたような気がした。少し考えて私はその声に従ってみることにした。何故かその方法は既に自分の中にあった。そして私は鳥を放つ為に森へ向った。』 (写真新世紀より抜粋) と言うのがストーリーとして出来すぎていると審査員からのコメントがあって、完成しすぎていると言う印象があったらしい、と言っていました。そうかー。洗練されていると感じたんだけどなー、と。私は、それはsituation(状況)の提示であって、それをストーリーだとは感じなかったのですが。ストーリーと言うかその前段階の設定って言う感じでとらえたんです。観た人の中にそれぞれのストーリーが展開するのは、この後だと思うんですね。 稚拙だと言われるよりも、完成しすぎている、と言われる方が何だかやるせないですね。審査員は吉楽さんの「抜け」を見て、自分が置いてきぼりにされたと感じたんでしょうか。
人の感じ方もそれぞれだし、伝え方もそれぞれ。少なくとも、吉楽さんの写真のファンが大勢生まれた事に間違いはないでしょう。
パピエラボで開催されていた「とりまつり」もユトレヒトに合わせて会期が延長になっているようです。

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by sanaegogo | 2012-12-16 00:00 | art


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