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面影 omokage


我が家の仏間にある亡くなった祖母の写真です。似てますよね、ワタシに。でもワタシ、この方には一度もお会いした事はないのです。 祖母が亡くなったのはワタシ達の生まれるずっと前、お父さん達が子供の頃だそうです。そして、ワタシがこの祖母の存在を知ったのは高校生の頃かな。
我が家は割りと古い家で、仏壇の中には位牌が沢山あります。明治より前のご先祖のは、木の短冊みたいなものに簡略化されて、大きな位牌の中にまとめて入ってたりします。お盆になると毎年それをお迎え用の祭壇にひとつひとつ出すのですが、それをしていた母を手伝っていた時、割りと新しい位牌がひとつ出てきて、遺影の数と位牌の数が合わないのに気づきまして。位牌になった曽祖父母、(何て呼ぶのかもう分かりませんが)その上の代の祖父母。おじいちゃんもおばあちゃんもまだ健在なのに、何故か位牌が5つ。 『あれ? これは誰の?』 とワタシが訊ねると、母も母で、さらっと 『あら、お父さんのお母さんのよ。』と。ワタシ、『????』。母、『あれ? 知らなかったっけ? お父さんの亡くなったお母さんのよ。』と。結構いい歳に育っていたのに初耳のこの事実に、驚愕し、『えっ? じゃ、じゃあ、おばあちゃんは、誰?』と。母はあっけらかんと、『後妻さんよ。』と言ってのけ、ワタシは本当に驚き、兄弟姉妹に『知ってた?知ってた?』と(何故かこっそり)聴いて回るとみんな知ってたみたいでした。考えてみたら、お父さんとおばあちゃんは10歳ちょっとしか歳が離れていなかったんですが、おばあちゃんのちゃんとした年齢まであまり把握してなかったし、全く考えもしなかった事なので、気にも留めてなかったんですよね。2人の歳の差がワタシの意識に上ってくる事すらありませんでした。 (今にして思うとあんまりな感じもしますが。) でもワタシの知っているおばあちゃんは、二重まぶたがぱっちりと、とても可愛らしく、若々しく、家に遊びに来る友人は、『あれ、おばあちゃん? お母さんみたい!!』とよく言われたものです。お父さん、おば達、そして孫の私達が誰一人としてあの美人のおばあちゃんに似なかったのは何故か不思議だったのですが、その時までその理由は知る由もなく。そう言えば、家で行われる誰かの法事の度に、大叔母達がワタシの顔をみて、何かこそこそ話しているような事があったようなないような、それはうっすら覚えてはいます。お義姉さん(兄の奥さん)は、『早苗ちゃん、だんだんそっくりになってきて、まぁ、ホント。』『あらあら、菊江さんに聞こえたら悪いわよー。』などと言う会話を耳にした事がある、と大分経ってから、この写真を仏間に飾るに至った時、教えてくれました。 この写真は、ワタシの知ってる祖母が亡くなり、その祖母を大切にしていた祖父が亡くなった時、父が意を決したように小さな小さな写真を出してきて、『これも大きく伸ばして飾りたい。』と言って、遺影にしてもらった時の事でした。お父さん、ずっとそんな風に想ってたんですね。遠慮もしてたんでしょう。 自分でも自分に似てると思える、一度もあった事のない人。 何だか不思議な感じがします。家族仲のギクシャクしたところとかは決してなく、菊江おばあちゃんも大好きなんですが、何となく、この方ともお話とかしてみたかった気がします。 自分に似ているところが面影意外にもあったのか、なかったのか。
あんなに可愛らしかったのに、歳のうんと離れた人で、子供が3人もいる家に初婚で入ったおばあちゃんの事とか、おばあちゃんとおじいちゃんの間に子供が生まれてたら、とか、3人の子供をおいて若くして他界したこの方の心残りとか、結局2人の奥さんに先立たれたおじいちゃんの心痛とか、おじいちゃんは孫の前じゃそんな話一度もした事ないけど、この方との結婚生活の事とか。(あ、おじいちゃんは多分、若い頃はハンサムだったんです、きっと。身長は明治男なのに180cm近くあったし。) そんな、当事者達が誰もいなくなったささやかな家族の秘密めいた事。この遺影を見ると時々考えたりします。止まった時間。その中でうっすら微笑む人。会った事がないけど、自分に似てる人、自分に近しい人、本当に不思議な感じがします。

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by sanaegogo | 2012-07-22 00:00 | つぶやき


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