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「アーヴィング・ペンと三宅一生」展 @ 21_21 DESIGN SIGHT


21_21 DESIGN SIGHT Exhibition 企画展
「アーヴィング・ペンと三宅一生」展
Irving Penn and Issey Miyake Visual Dialogue
2011.9.16(金) ― 2012.4.8(日)
写真:21_21 DESIGN SIGHT Website より引用

これはアーヴィング・ペンの作品と三宅一生の作品を同時に観ることができる素晴らしいそしてちょっぴりお得な企画展。アーヴィング・ペンが三宅一生のコレクションのポスターのために撮影した膨大な量の写真をポスターの展示で、また、超高性能、超高精細プロジェクターによるプロジェクションで観る事が出来ます。そしてペン自身がそのスタジオ撮影のために行ったスケッチやその他の彼のオリジナルプリントの作品なども観る事が出来るのです。"Visual Dialogue"とあるのは、三宅一生が、写真家が見たまま感じたままを自由にその写真に投影できるよう、全てを任せ撮影に一度も立ち会うことがなかった、と言うエピソードから来ています。三宅一生は自身の作品を送り、アーヴィング・ペンはただそれを受け取り、下打ち合わせや作者の意向やコンセプトを予め確認することなしに、直感的にそれをさらに別の(彼自身の)作品へと昇華させる。信頼関係とお互いの仕事を尊重・尊敬しているからこそ出来た業です。三宅一生の作る自由奔放で立体的で躍動感のある服を通じてお互いのインスピレーションを表現すると言う事で会話していたのですね。その仲立ちとして重要な役割をしていたのが、三宅氏の名代として全ての撮影に立ち会ったという木村みどりさんで、この企画展のディレクターでもあります。なので、この木村さんを通して2人は対話をしていた、と言う言い方をする事も出来ます。しかしながら、伝書鳩のように三宅氏の意向を伝えるために撮影に立ち会っていたのではなく、点と点を繋ぐ線のような役割に徹されていた、という事が、同じく展示の中にあったアニメーションの中で語られています。
三宅一生の生み出すその服。どうしても「プリーツ・プリーズ」に行ってしまうのは貧困な発想としか言いようがないのですが、同時通訳のコーディネーターをしていた頃、セレブな会議通訳者は出張となると必ず1人か2人はこのプリーツ・プリーズを仕事場で着ていたのを思い出します。「畳んでもシワにならないし、軽くて立体的なので着やすくて、そして仕事場でもカジュアルにならなくていいのよ。」と話してました。時々見るパリコレの映像の中では「和風」を取り入れているようで、しかしながら日本人にありがちなように和風である事に媚びすぎる事なく、和風と洋風が、もっと言うと世界中の色々な要素が詰まって融和したような服を作るデザイナー、と感じてました。(一昔前に、音楽で言うと、ワールドミュージックと言うジャンルが流行りましたが、自分の中ではあの感覚に近い気がします。) 今回の企画展を観て思ったのが、やはり、色彩が綺麗。そして、素材の質感が絶妙。という事。「綺麗」「絶妙」では、あまりにも表現力がないようにも思うけど、何とくどくどと語るよりも、この「綺麗」と言う言葉がぴったり。そう思ったのです。横に広いスクリーンに向って数台のプロジェクターでその服の数々を次々と投影していたのですが、躍動感のあるモデル達のポージングを切り取ったその画像の数々に見入ってしまいました。これは本当に圧巻でよかったです。そしてこれが、アーヴィング・ペンの撮影したものなのです。(因みに、今回のこの空間デザインをしたのは、建築科の坂茂氏。幾つかの直線で構成されたこの空間も、スタイリッシュでとても素敵でした。)
そして、アーヴィング・ペンの写真。その立体的な服のどの場面が一番それを表現しうるか、それを的確に捉えていて、(おこがましく僭越ですが)流石です。モデルに対する指示も的確でよいのでしょうね。テキストの中で三宅氏も「自分では気がつかなかった全く知らない一面を見せてくれる。」と言うような事が語られていました。その躍動感溢れるモデルのポージングと背景を極限までシンプルにしたトリミングと言う手法がまた絶妙なんです。これにはクラクラしました。被写体に力を与えることが出来なければ、この手法は成り立ちません。展示されていたオリジナルプリントの中でもこの「simplify」を見て取る事が出来ますし、これは彼の一貫して貫いていたスタイルで、とても感化されました。彼にとっても動きによって猫の目のように表情を変える三宅一生の服の一瞬を捉えるのは、とてもやりがいのあるchallengingな仕事だったのではないかと拝察できます。
そんな2人の仕事を繋ぐ線としてに重要な役割を果たしているのが、ポスターデザインとタイポグラフィーを担当した田中一光。もうこうなったら「いい仕事」の連鎖ですね。相乗効果です。名前のある仕事が出来る人々。そしてお互いにその粋を出し合ってひとつの秀逸なものをつくるその作業。本当に憧れます。


写真: FASHION PRESS website より引用 (Photo by Masaya Yoshimura)

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by sanaegogo | 2012-01-12 00:00 | art


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