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石川直樹 「ARCHIPELAGO」



石川直樹さんのトークショーに行ってきました。写真集「ARCHIPELAGO」について石川直樹本人が語る、と言うものだけど、非常に楽しみにしていたのだ。石川直樹を知ったのはここ2・3年の事で、写真家と言うよりは冒険家としての活動に軸足があると聞いていたのだけど、トークの最後に質問を受けて、自分は冒険家と言うよりは旅行家である、と言い切っていたのが興味深かったです。「恐怖とか何かを克服したいと言う気持ちで世界を回っているのではない」と。プロフィール写真などでご本人の姿は拝見していたのだけど、細身で小柄でどちらかと言うとインドア派の感受性の強い文学青年のような感じで、執筆もしているし、きっと「写真家」とか「冒険家」とか、自分を限定されたくない人なんだなぁ、と思ったりした。なので、「写真家然」としていないところと何となくテンションが低い感じから、写真の技術とか理論とかまで熟知していない素人さんとも話とか出来ちゃいそうな人、そんな印象を受けました。現に200名程のオーディエンスを前にして、まるでそこら辺の店先か何かで話をしてるような雰囲気でトークは進められていきました。
「ARCHIPELAGO(アーキペラゴ)」とは「多島海」あるいは「群島」のことだそうで、写真集にはトカラ列島、奄美、沖縄、八重山、台湾へと渡って行く南の旅とサハリン、千島、アリューシャン、アラスカへと渡って行く北へ、島の連なりを伝っての周縁・辺境への旅が綴られています。特に昨年皆既日食で話題になった悪石島から始まる南への旅での写真の数々は、心に残りました。島に渡り、島の人々の中に入り込み、決して特別ではない島の風物を淡々と撮影していくその流れは、その場以上でも以下でもないありのままの風土を映し出していて、ドキュメンタリー感があります。 石川さんは常に観察する人であって、主観とか思い入れ・思い込みとかが介入してない素直なその場に居合わせた事の「驚き」のようなものが表現されてます。好きなんですねぇ、私。これもある意味『記録写真』で、写真そのものの制作意図とかが前面(全面)に出ていないところにとても惹かれます。ご本人はかなり民俗学とか文化人類学に造詣が深く、それをバックグラウンドに1枚1枚の写真ではなく連続性や構成をもって表現されているのが、ご本人が、自分はあまり写真家としてのフィールドに立っているのではない、と言われる所以なんだと思われます。レヴィ=ストロースの「悲しき熱帯」にかなり影響された、と語った瞬間、周囲の人々が一斉にメモっていました。石川直樹さんの写真が何故好きなのか自分なりに解明するには、読んでみるのもよいかも知れません。



現在、狩猟と言う行為に関心を持っているとの事。風貌は世に言う「草食系男子」って感じなのですが。

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by sanaegogo | 2010-02-06 00:00 | art


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