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― 君がここにいたらいいのに Fiona Tan Ascent





Fiona Tan Ascent|フィオナ・タン アセント

2016年7月18日(月・祝)—10月18日(火)
IZU PHOTO | MUSEUM

http://www.izuphoto-museum.jp/exhibition/208709273.html


Ascent (2016), Fiona Tan, still, Photo: nakano yuko

IZU PHOTOに行くのだから晴れの日だったらそれは気持ちの良い秋の日だっただろうけど、この日のクレマチスの丘は生憎の土砂降り。 家を出た時には茅ヶ崎は降っていなかったのにね。
チケット売り場で何やら人だかりが出来ている。 何度か来てるけど、あまり混んだところを観た事がなかったのに不思議に思っていると、自分たちの番になって理由が解りました。
プロジェクターに不具合があって、今日はメインの映像作品が観られないとのこと。最後の14時45分からの回に修理が間に合えば上映するので、戻ってきてください。と言われ、ちょっと雨を恨む。(因果関係はないみたいなんだけど。)
それでは、先にヴァンジ彫刻庭園美術館の『生きとし生けるもの』を観て、ランチして。
雨足は強くなるばかりで、止む気配はないんだけど、最後の上映は無事行われる事となり。ギリギリセーフで、念願の『アセント』を観て来ました。 これが観られなかったら、ここまで車を飛ばして来た甲斐がなかったけど、本当によかった。

フィオナ・タンの『アセント』は、2014年のIZU PHOTOのMt. Fuji Projectで公募された4,000枚あまりの富士山の写真を彼女のイメージの中で構築されたストーリーに沿って繋ぎ合わされ、紡がれたプロジェクション作品です。

あなたの富士山写真が
フィオナ・タンの作品の一部になります。
http://www.izuphotoproject-fionatan.jp/


時間も季節も時代も場所も撮影した人たちも、みんなばらばらな富士山の写真が、ヒロシと女性の往復書簡のような会話から生まれるひとつの物語に再構築されています。
4,000ものそれぞれの瞬間に立ち会っている富士山。
唯一無二の山であるのに、ふたつとして同じ表情を見せる事なく、ひと時も欠かすことなくそこに在り続ける普遍(不変)の山。
寝転びながら、時にオーバーラップされ、スクリーンの中に現れては消えていく富士の山映像を見ていると、どの山脈にも属さない孤高な霊峰に、「見守られている」という感情が、沸き立たせられ、私たちは富士山の庇護の許ここにいます、という気持ちになります。
4,000枚ものランダムな画像をひとつの物語として紡いで行く、フィオナ・タンの緻密な作業、ばらばらで無関係の写真たちからその1枚が持つ物語を損なってしまうことなく、繋ぎ合わせていくその集中力と根気に、静かなるエネルギーを感じます。


Ascent (2016), Fiona Tan, still


語り口は常に穏やかで優しいものなのですが、語られている話は漠然としたところがなく、むしろ毅然としていていました。
「大切な事だから少し話をしてもいいかな」
とヒロシがちょっと諭すように言うのですが、この口調や問いかけ方がとても好きです。
なにか一筋の意志を持って、はっきりとした物言いなのですが、強制めいたところがなく。
心の奥まで沁みこんで来るような心地よい優しい力強さを持ったその声の主は、長谷川博己さんでした。 やっぱり。
本当に素敵な声、素敵な語りでした。 しみじみと・・・・。
そして、女性の声はフィオナ・タンだったのですが、この声の主は 富士山そのものだったのかも、と思います。彼女の作り出したイメージの中では、富士山はきっと女性なのですね。
もしくは、物語の中に出てきた木花咲耶姫(コノハナサクヤビメ)だったのでしょうか。
女性は誰だったのか、無性に確かめたくなって、観終わった後ミュージアムショップでナレーション・テキストがあるかどうか尋ねてみたのですが、それは無いのだそうです。
図録が2冊出ていて、その中に脚本原案が書いてあったみたいなのですが、それはショップでは案内してもらえなくてとても残念です。
「君がここにいたらいいのに」
ヒロシは呟くのですが、ここ、って一体何処なんだろう。
高く空へと聳え立つ 富士の姿をスクリーンに眺めながら聴いていると、この空間でもない、この時間でもない、どこから聞こえてくるのかも、耳で聞いているのかもわからなくなります。 まるで何処か遠い精神世界の中からの呼びかけのように響いてくる、ヒロシの呟き声を聞いていると、ヒロシの処に行ってあげたい、そんな気持ちになりました。

もう一度、観たいです。


赤嶺優子 撮影 「元旦の富士山 故郷沖縄へ帰る機内から。2016年も頑張ろうと思えました。」
渡邉保明 撮影
渡邉保明 撮影
Photo by Mark Smith, Remote Viewing 75-2
渡邉保明 撮影
遠藤進 撮影
渡邉保明 撮影
渡邉保明 撮影
(* 写真 左上→右上から下へ。 敬称略)


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by sanaegogo | 2016-09-24 00:00 | art | Comments(0)