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エッジの利いた 江戸のポップカルチャー 俺たちの国芳 わたしの国貞




ボストン美術館所蔵
俺たちの国芳 わたしの国貞

2016.3.19 SAT – 6.5 SUN
Bunkamura ザ・ミュージアム

http://www.ntv.co.jp/kunikuni/



とても久しぶりの Bunkamuraです。江戸時代、歌川一門で鎬を削った兄弟弟子、歌川国貞と歌川国芳の作品が一挙に展示されています。その数、作品数にして170点、枚数にして350枚というもの。見応えがあったなぁ、とは思いましたが、そんな点数が展示されていたとはオドロキです。 展示されている作品は全て ボストン美術館の収蔵品で、ボストン美術館開館以来の大規模な回顧展(?)になるそうです。キュレーターの方、さぞかし奮闘したに違いありません。 ボストン美術館は世界有数の浮世絵コレクションを誇っていて、所蔵されている作品数は国芳国貞だけで1万4千枚を超えるというから、これもオドロキです。それもオドロキですが、何故本家本元の日本はこんなにも大量の浮世絵を手放してしまったのか、何故ボストンにあるのか、どうしてそうなっちゃったのか、それこそがオドロキでした。
国芳は、寛政9年、1797年生まれで、文久元年、1861年 没、国貞は、天明6年、1786年生まれ、元治元年、1865年没、共に江戸末期を華やかに、艶やかに彩った浮世絵師です。その作品も 150年も経っているとは思えないほどの素晴らしさで、「えっ? これって版木が残ってて刷り直したやつ?」と見紛うばかりのものでした。
そもそも「浮世絵」って、「現代風の絵」って意味だそうなんだけど、所謂現代のコンテンポラリー・アート(現代美術)とは違って、もっと庶民にとっつきやすく、解りやすかった風俗画で、決して美術館で鑑賞するような手のものではなかったのです。ヴィンテージとしての付加価値が付いたとはいえ、海外の美術館の収蔵品になり、こうして日本で凱旋展覧会が開かれるようなクオリティをもつものが、巷に溢れていたなんて、江戸時代、やっぱり侮れない、と再確認、再認識した次第。文化水準が本当に高かったのね、と思うと何だか誇らしげな気持ちです。(と言っても私は相州相模の国の出身ですが・・・。)
展覧会の構成もとても解りやすく工夫されていて、 国芳と国貞の作風が現代に生きる私たちにも例えやすいようカテゴライズされています。国芳のファン層は男気のあるヤンキー達。義理と人情を重んじて、年下には温情を目上には礼節を良しとしたちょっとやんちゃな男衆に人気だから「俺たち」。一方、国貞は、流行に敏感な洒落乙達に人気で、雑誌のモデルやメディアの中のスターやアイドルに憧れ、真似てみたりするファッション大好き女子たちを描いたから「わたし」。今でも沢山いますよね、そんな老若男女がそこら中に。

わたし的には国芳は「ドラマチックなセットアップ」。とにかくどの画も画面の中の構成が躍動的でかつばっちりとキマッていて、歌舞伎の題材になっている古典の物語のクライマックスの場面を絵巻物のようにトリプティクスの中に凝縮して表現しています。遠近法を持たない日本画(特に絵巻物かな)独特の視点の使い方で場面の展開までも一挙に描き上げてしまうダイナミックさが魅力です。











そして国貞は「日常スナップ」みたいな印象。ゴージャスな衣装に身を包んだ花魁道中を着こなしの手本にしたり、(まあ一種の)セレブリティのように非日常的な着こなしとある種のオーラに憧れたりしたんでしょうか。アイドルのプライベートショットみたいなものを彷彿とさせるものもあります。シュッとしたポージングではなく、リラックスしてふと日常に垣間見るチャーミングな仕草とかを自然体の雰囲気で描いたものも多く、当時流行っていたという弁慶縞の着物に身を包んだおしゃれ大好き女子を題材とした作品に心が和んだりします。












Facebook Post:
https://www.facebook.com/sanaegogo/posts/10207577178925991
(この日は内覧会に先立ってのトークショーにも参加。 展覧会をイメージしたスペシャルドリンク(アルコール)付きで、私は国芳をチョイスしたら、多分自分では絶対頼まない グラスホッパーが出てきました!)

と、それぞれの魅力、見どころは色々ありましたが、共通して言えるのがその色の何とも言えない風合いです。ちょっとくすんだ和紙の上に重ねられたグラデーションや抑え目ながらも鮮やかな色彩。冒頭でも言いましたが、これが150年も経っている画の発色とは! 俄かには信じられない感じ。浮世絵というと「モナリザ」のように描かれた役者絵や江戸を離れた風光明媚な風景画がまず想像されてしまうほど自分の中での浮世絵感は貧困だったのですが、これを観て一気に払拭されました。江戸の伊達と粋をたっぷりと楽しんで、タイムスリップして、エッジの利いた江戸の町に行ってみたくなりました。(笑)

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by sanaegogo | 2016-03-30 00:00 | art | Comments(0)
Cathedrals of Culture, Wim Wenders



『Cathedrals of Culture』(邦題: もしも建物が話せたら)
2016年3月21日(日) 渋谷アップリンク
製作総指揮:ヴィム・ヴェンダース
監督:ヴィム・ヴェンダース、ミハエル・グラウガー、マイケル・マドセン、ロバート・レッドフォード、マルグレート・オリン、カリム・アイノズ
http://www.uplink.co.jp/tatemono/
Facebok Post: https://www.facebook.com/sanaegogo/posts/10207446864188204


「これまでにない新感覚のドキュメンタリー映画」と各所で紹介されているこの作品。新感覚、それはとてもよくこの作品を言い表していると思いました。(ドキュメンタリー映画なので、それは自然の流れなのかも知れないのですが)、6編のオムニパス形式の中で、クライマックスを捉える事が難しく、淡々と時間の流れに沿って目の前の映像を受け入れていくといった鑑賞は、まるで美術館に行って、美術作品を観た後のような感覚が残るような気がします。 ヴィム・ヴェンダース監督のドキュメンタリー作品はいくつか観て来ましたが、ドキュメンタリーとして撮影しているのですが、ドラマチックなストーリー性がふんだんに盛り込まれていて、演技を指示したり、台詞を与えている訳ではないのに、シーンの創り方や登場人物の本質の引き出し方が卓越している、と感じられるような作品ばかりです。 今回もその雰囲気は保ちつつも、建築物が主役なので、そこに登場する人物や関係者が更に客観的なものになっていて、当事者めいた登場人物がまるでいないのが、この映画を不思議な雰囲気にしているようです。 言わずもがなですが、建物はたんなるものを内包する箱ではなくて、そこには、機能というものがあるのですが、建物を使う人々もまた、(この「使う」と言うのは、そこで働く人も利用する人も含めた意味での「使う」なのですが。) この機能の一部であるかのように表現されています。 原題は「Cathedrals of Culture」。「もしも建物が話せたら、私たちにどのような言葉を語り掛けるのだろうか」をテーマに制作されているので、邦題は「もしも建物が話せたら」になっていますが、この「Cathedrals of Culture」の意味を考えた時、物語りはますますミステリアスな様相を呈するような気がして、建物の心の声を聴くことで、ヴェンダース監督が表現したかった真の意味は何だろ、と考えてしまいます。それを掘り下げて考えるには、建物達の語る言葉はあまりにも自分の感情を押し殺して控えめなような気がしてしまうのは、建築物という存在があまりにも恒久的すぎるからなのかも知れません。(まるで遥か昔からの村の歴史を語る長老のように。) 観終わってから、「だから何だ?」と感じた人も多いのかも知れませんが、それも理解できる気がします。なぜなら、建物は、自分の意志や意見や、喜びや悲しみ、感じることをあまり語ってはいないからです。ただ淡々と、自分がそこに存在する事を語っています。


監督:ヴィム・ヴェンダース
ベルリン・フィルハーモニー (ドイツ・ベルリン)
ナチス・ドイツで優生学思想に基づいて行われた安楽死政策を遂行していた安楽死管理局のあった通りに面して建てられています。建てられた当時は辺りは街らしい佇まいはまるでなく、この建物だけがぽつんとそこにあった、と建物は語っています。








監督:ミハエル・グラウガー
ロシア国立図書館 (ロシア・サンクトペテルブルク)
18世紀後期、皇帝エカテリーナ2世によって建てられたロシア最古の公共図書館。そこで働いている女性たちが、館内を血液や体液のように巡って、蔵書や図書カードを細胞の新陳代謝のように整理していた姿が描かれています。








監督:マイケル・マドセン
ハルデン刑務所 (ノルウェー・ハルデン)
ノルウェーにある世界一人道的であると言われる刑務所。独房には最新型テレビと小型冷蔵庫が完備されていて、太陽がよく差し込む大きめの窓もあります。運動場を囲む高い壁には、ノルウェーのグラフィティ・アーティストのドルクが手掛けた壁画が描かれています。「私は刑務所。」と、全てを許し、受容するようなその刑務所は女性として語っていました。





監督:ロバート・レッドフォード
ソーク研究所 (アメリカ・サンディエゴ)
ソーク研究所は、ポリオの予防接種を開発したことで有名なカリフォルニアの研究所。ロバート・レッドフォードは、自身が11歳の時にポリオに罹患したそうです。映画『普通の人々』で見た郊外の美しい自然風景を彷彿とさせて、穏やかで静かなその映像にいつしか心地よい眠りに誘われました。





監督:マルグレート・オリン
オスロ・オペラハウス (ノルウェー・オスロ)
建築を手がけたのは、ノルウェー現代建築の巨匠スノーヘッタ。海の間近に建ち、氷山の造形をしたオペラハウスで、屋上からはオスロフィヨルドや市内を一望することができます。訪問者は誰でも自由に、地上から屋上へと続くゆったりとしたスロープの上を歩くことができ、市民の散歩道としても愛されていて、建物はその愛情を一身に享受し、喜びに満ちていました。








監督:カリム・アイノズ
ポンピドゥー・センター (フランス・パリ)
シャルル・ド・ゴール政権で首相を務めたポンピドゥーが推進した開発計画によって建設されました。彩色されたむき出しのパイプとガラス面で構成された外観は、現代的を通り越して前衛的で、建物自体がひとつの芸術作品のよう。パリが芸術の中心地として返り咲き、フランス政府がコンテンポラリーアートを支援していることを内外に知らしたい、といった威信を背負ったプライドが滲み出ていました。








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by sanaegogo | 2016-03-22 00:00 | movie | Comments(0)