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天空の渚


天空の渚
野町和嘉
Gallery 916
2016.1.15 – 2.14
http://gallery916.com/exhibition/theshoreofthefirmament/


「写真が私たちに与えてくれた楽しみの一つに、見たことのない世界との出合いがある。遠く離れた場所にどんな風景が広がっているのか、そこでどのような暮らしが営まれているかを写真は正確に描写し、私たちに届けてくれる。」
と、この展示に寄せたForewordでタカザワケンジさんも記しています。
ナショナル・ジオグラフィックやマグナム・フォトの写真にあるようないわゆるジャーナリズムにのっとった写真は、時として発するエネルギーが私にとって強すぎて、まさに「写真の力」みたいなインパクトを受け留めきれない時がままあるのですが、野町さんのこれを観に行きたいと思った動機のひとつに、撮影地が中南米のメキシコ、ボリビア、チリ、アルゼンチンを巡る旅だったというのがあります。
昔観た映画で、「The Motorcycle Diaries」というのがあって、若き日のエルネスト・チェ・ゲバラがアルゼンチンからチリ、ペルーと旅をするストーリーなのですが、その映画に感化されていて、この写真展にその世界観を感じられるかしら、と思ったからです。まあ、それは私の早とちりで、ロードムービー的な構成ではなかったのですが、内容は充分に素晴らしいものでした。
南米やラ米の持つあの独特の情感が巨大とも言える写真の中から滲み出ていました。特にやはり、難破船を捉えたあのシリーズは、頑強な巨大船が静かに滅びていく時間をも捉えているようで、こんな世界の誰も知らない片隅で朽ちていくその様を目の当たりに出来るのも、また、違った形の「写真の力」とも言えるのかも知れません。野町さんの写真には、思考が事実だけで埋め尽くされてしまうような、見せつけられる「提示」はなく、どこか余白があり、そこに情緒めいたものを感じる事が出来て、自分の中の内なる旅みたいなものとオーバーラップさせることを許容してくれるように感じました。それは偏に風景写真が中心の構成だったからと言えるとは思いますが。



朽ちていく難破船は、火災にあって座礁して放置されたものだそうです。
どんよりよした空とあり得ない場所に佇む船の記憶。ドラマチックでセンチメンタル。




一番好きなシリーズ。
こんな光景をこの眼で見たい、と思いました。
ここに佇んでいる自分の姿を想像しました。




南米、ラ米によく見られる精緻な彫り物の装飾を施した教会の天井。
隅々まで埋め尽くされたキリスト教世界。


同一のフォーマットが淡々と、しかも1枚1枚が圧巻で、それは、あの916の空間にとてもフィットしていたと思います。大きくプリントしたのは、 EOS 5Ds 約5060万画素とタイアップした商業的な側面もありましたが、細部にわたるその再現力、描画力は素晴らしいものでした。何枚か写しだされた光景の部分の写真を撮ってみたのですが、まるで、自分がそこに行って自らの眼で見て来た風景のように映し出されていて、自分自身もその風景の中に佇んでいたような錯覚を感じます。視覚体験がそこに行ったかのような体験にすり替わってしまうのです。自分が今よりもっと若く、色々な選択肢を選べるような年代で、男性として生まれていたら巡ってみたかった未踏の地への旅を野町さんはここに届けてくれたのです。



イギリス船籍
1889年アイルランド建造
Load Lonsdale号

1909年にフォークランド諸島にて火災の後
チリ・マゼラン海峡 ブンタ・アレナス海岸に放棄された




パタゴニアの風景。
いつかは訪れてみたいけど、叶うのかな。




高地の南米にある水辺の写真も多くありました。




天空にある渚、です。



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会場の風景もアップしてあります。
https://www.facebook.com/sanaegogo/videos/10207080054858200/



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by sanaegogo | 2016-01-31 00:00 | art | Comments(0)