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Thomas Ruff: photograms | TOLOT/heuristic SHINONOME


グロンスキー、ヴィヴィアン・サッセンと続いて、トーマス・ルフの写真展 「photograms」です。Photogramとは、写真作品の制作手法のひとつで、カメラを使わずに印画紙の上に直接ものを置いて感光させるというもの。1980年代にタルボットがこのフォトグラムを用いて作品を制作している事例が残っていて、それが始まり。その後1900年代に入って手法が確立されて、1920年代初頭にはマン・レイなどがフォトグラムで大量に作品を作っていて、以降一般的になっていったそうです。この秋、ルフについても2個所同時開催で写真展が開催されていて、銀座のギャラリー小柳と東雲のTOLOT/heuristic SHINONOMEで大迫力の写真展を開催しました。 ギャラリー小柳では、フォトグラムではなくて、「ma.r.s. and negatives」という、NASA の火星探査機によって撮影された火星表面の白黒の高解像度デジタル画像を使用して、画像の構図を変換したり、着色加工を施したりして、テクノロジーを駆使した臨場感あふれる作品を展開しているそうです。(私はこちらには足を運んでいないのですが、写真集「Mars」は観る機会があって、写真集もかなり豪華で重厚感があったのですが、あの写真をまとめるとなるとこんな装丁になるんだろうな、という感じで内容もかなり重厚感のあるものでした。



さて、私が観た東雲のTOLOTの方は、前述のフォトグラムの手法で、デジタル技術を駆使して、もはや写真とは思えないような超仔細な世界とその質感を、巨大なサイズの作品で展示していました。もはや写真はデジタル技術と2人3脚というか、抱き合わせというか、フィルムの画像化に現像液が必要なように、現代写真ではデジタルと切り離せない関係にあるのだ、というのを見せつけるというか、ある種証明しようとしているかのような感じです。その質感はまるでエアスプレーで描いた画のようですが、高度なハイテクを駆使して突き詰めていくと、まるでローテクなアナログの表現手法のように見えるというのが何だか矛盾めいていて面白い気がします。 しかもルフがベッヒャー夫妻に師事していたというのがまた面白いですね。 グルスキーといい、ルフといい、ベッヒャー夫妻のあのアナログで緻密な写真には、テクノロジーの芽というか、潜在的テクノロジストをインスパイアさせる何かの要素があるのだとしたら、非常に面白いと思います。 卒業論文のテーマとかにしたら、膨らみそうな感じがします。


『Thomas Ruff: photograms』
2014年10月4日(土)~11月15日(土)
東雲 TOLOT/heuristic SHINONOME

ルフの作品は、「IMA」Vol.9 2014 Autumn の表紙も飾っています。

グロンスキー、サッセン、そしてルフと現代写真を現在進行形で彩っている3人の作家がコンプレックスの3つのギャラリーで同時開催で写真展をすることは、めったにない機会で、10月4日のオープニング・レセプションは3名の作家が一堂に会して、盛況に行われたそうです。 日本の現代写真のシーンも盛り上がってきましたね。



©Thomas Ruff, r.phg.11_Ⅰ, 2014



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by sanaegogo | 2014-10-18 00:02 | art | Comments(0)
ふたつのVivian Sassen展 ― LEXICON と PIKIN SLEE
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私のまわりにヴィヴィアン・サッセンのファンって結構いるんですよね。 ファッションの世界に軸足を置きながら、鮮烈な色彩のアートフォトとしての写真作品も手掛けていて、また、ファッションシューティングの方でも一風変わったハッとするようなショットを数々生み出しています。ここ最近は2個所で同時開催という形式をとる写真展が続いている気がしますが、ヴィヴィアン・サッセンについても例外ではなく、ここ東雲TOLOTのG/P + g³/ galleryと恵比寿のG/P Galleryで同時開催されていて、日本初の個展になるそうです。 ヴィヴィアン・マイヤーはオランダの人で、幼少の頃に南アフリカに滞在していたそうで、(ケニアと言っているテキストもあります)、幼い少女にアフリカの鋭く射抜くような日差しと躍動的なそこに住む人々の記憶はきっと強烈なインパクトを与えたのでしょうね。人格の形成に影響を与えたと言っても過言ではないのでしょう。 なので、「自らのルーツ」として位置づけ、アムステルダムで暮らす今でも、繰り返しそこを訪れ撮影を続けているその行為も容易に理解できます。ヴィヴィアンの写真には強いコントラストと濃厚な色彩があります。 スタジオの写真はあまり見たことがないのですが、今回観ふたつの個展でも、強い明るいライティングを施したような眩しいばかりの光と、その強い日差しによって落とされる漆黒のような濃い影が随所に見られました。質量までも感じてしまいそうな骨太の太陽光は輪郭のはっきりとした存在感のある影を創りだします。 カラーであれ、モノクロであれ、彼女の写真にはその明と暗が力強く存在しています。


LEXICON
会期:2014年10月4日(土)~11月29日(土)
会場:東雲 TOLOT内 G/P + g³/ gallery
http://gptokyo.jp/archives/1789




「LEXICON」という言葉を聞いて、私のボキャブラリーにはなかったので、彼女のバックグラウンドから南アフリカの都市の名前かな?と思っていたのですが、用語集、(特定の分野の)語彙、目録、語彙目録とかいう意味の単語だったのは意外でした。これは、写真集のタイトル『LEXICON』からの作品展示で、人間の根源的な感情をテーマに初期から近年までの南アフリカで撮影された写真を再編成したものだそうです。 なるほど。そこにクローズアップされている南アフリカの現地に住む人々が、一見奇抜なポーズをとって、全身で何かの「言葉」を表現しているようで、その集大成としての「語彙録」なのでしょう。ただ、その肢体のポーズに意図されている感情は、とても複雑で複合的なもので、単純にひとつの言葉を象徴しているだけのものとは思えないほど意味深な雰囲気が続きます。 ひとりの人物が示すポーズ、ふたりの絡み合ったいかにも不自然なその状態の意味するところは、ヴィヴィアン自身の意識にも昇ってきていないような気がします。 どの写真も何かの確認作業のようにじっくりと時間をかけて撮影されているのを見て取れるし、その根源にある何かの言葉(感情)を、語彙(感情の総体)をヴィヴィアン自身が探しているかのようにすら見えます。 「嘆きのポーズ」「Sympathy(共感)のポーズ」「絆のポーズ」「羞恥心のポーズ」自分勝手に写真の中の被写体のとるポージングに名前を与えてみようとすると、いかにそれらが一言では顕しきれない複雑で意味深いものを孕んでいるかに気づき、それがヴィヴィアンの持つLexicon そのものなのだと再確認できて、これは面白い作業でした。



全くの余談ですが、この不自然極まりないポーズを見て、昔一世を風靡した「ヴォーギング」とか「山海塾」とかを少し彷彿とさせるものを感じましたが、これはこの両者の造詣に深い人に言わせればきっと、「単なる見た目の問題ね。」と一笑に付されるのだと思います、が、なにか基本の理念みたいなところで繋がっているような気もします。そしてその鮮やかな色彩と強いコントラストを持つ鮮烈な写真であるにも関わらず、どこか憂鬱で何ものかへの畏怖や畏敬を感じる雰囲気を持つその表現世界は、まさに「光」と「影」のコントラストによって象徴されているものなのでしょう。ある種の精神世界がそこには横たわっています。彼女が写し撮りたいものは、その「明」の部分ではなく、その影にひっそりと身構えている「暗」の部分であるに他ならない気がします。それらの写真はある種の感情を表してはいるのですが、そこに写されている人々は一切の感情を排しているかのようであるのが印象的です。





PIKIN SLEE
会期:2014年10月4日(土)~11月30日(日)
会場:恵比寿 G/P gallery
http://g3gallery.jp/archives/782




Pikin Sleeとは、アフリカのスリナムにあるスリナム川の上流の熱帯雨林の中にある村の名前だそうで、サラマッカ族という部族が暮らしています。彼らの祖先のマルーンと呼ばれる人々は18世紀にオランダの植民地から逃れてきた奴隷だそうです。この村で撮影された写真で構成されたPIKIN SLEEは鮮やかな色彩のLEXICONとは対照的にほとんどがモノクロームの風景ばかりです。風景というか、その村での生活の営みを表している某かのシンボリックな「モノ」の連続です。どこか静物画の絵画のような雰囲気にも通じるその作風はヴィヴィアン・サッセンの新しい境地を垣間見せるものだそうです。 よりプリミティブでありのままで、実生活に眼を向けたような落ち着いた静けさ雰囲気の写真です。 しかしながら、その対象の捉え方にはヴィヴィアンらしいどこか迫力めいたところが感じられて、言葉として何かを表現される前に、そのものとして何かを語っているようです。 シンプルな写真だけに、ストレートに感情移入された生々しさみたいなものがあります。よく右脳は画家、左脳は小説家などと言われますが、このヴィヴィアン・サッセンは、そのアウトプットに右脳しか使ってないのじゃないかな、なんて思います。その写し撮るものだけで雄弁に何かを語っているのですが、それは言葉を介してでなく、言語になる前の感情みたいなもの、と言ったらよいんでしょうか。 雄弁に語ってはいるものの、それは言葉ではうまく表せないのです。 言葉で冷静に表現しようとしても、押し迫って来る何かの感情で溢れてしまい、もはや言葉で表そうとする事にはあまり意味がないという事を思い知るのです。 寡黙さが雄弁にありのままを語っているかのようです。




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by sanaegogo | 2014-10-18 00:01 | art | Comments(0)
アレキサンダー・グロンスキー (Alexander Gronsky) | YUKA TSURUNO GALLERY


I confese… 実は今年の私の写真は、このグロンスキーの影響を多大に受けているようです。だだっ広い風景の中にぽつぽつと点在する人々を散らして、ハイキー気味な写真を撮る。これは、今にして思うと明らかにグロンスキーっぽいと思うのですが、間違いないです。初めてグロンスキーの作品を見たのは、「2013 Summer のVol.4 特集 来るべき写真家のために」でした。
―― 孵化したばかりの作品を理解しようと試みることは、私たちがいま住んでいるこの世界と向き合うことでもあり、ひいては、遠からぬ未来を予測することでもある。
「来るべき写真家」の1人としてピックアップされているように、グロンスキーも確かに若いです。1980年生まれだそうです。もともとは報道カメラマンだそうですが、まるで映画の一場面のために特別に設定した時代や都市の風景のようなどこか違和感の残るランドスケープの写真を撮ります。Vol.4で見た時は、正直自分の中でそれ程インパクトを持って迎え入れた訳ではありません。ただ、雪景色の写真は好きなので、それで印象に残っていたのかと思うのですが、じわじわ、じわじわと来ましたね。 そして、グロンスキーが来るぞ!と知った時、何だかとっても楽しみにしている自分に気が付いてしまった訳です。
そんなこんなで、東雲にあるTOLOTのYUKA TSURUNOで開催されたグロンスキー展に行って来ました。



Alexander Gronsky
アレキサンダー・グロンスキー
YUKA TSURUNO GALLERY
September 6 - November 15, 2014  (*会期を延長しました)
Website
Works in Exhibition
Installation View




『作品の特徴として、グロンスキーは一枚の写真の中に、あらゆる意味での「境界線」を潜ませています。それは、水平線で示される視覚的な境界線だけでなく、郊外と都市、社会主義の遺産としてのインフラと手つかずの自然、私的空間と公的空間、生と死といった様々な境界でもあり、また同時に、それらの全てが一つの画面に収められた、境界のない大地の風景としても提示されています。』
テキストの中に記されているこの「対比」ですが、確かに。ネガティブなものとポジティブなもののコントラストが作品に独特の印象を与えています。『周辺環境と地域住民の関係性を探求する作品』という表現もあるでしょう。ただもっと単純に、このどことなくチグハグな情景は、無理やりに架空の世界を設定した一昔前のSF映画のようでもあり、「近未来的」な情景を感じさせます。 この「近未来的」という言葉もどことなく古びた響きで、グロンスキーの暮らす旧共産圏のイメージとダブるような気がします。ある時点で忘れ去られているかのような近代化です。(余談ですけど、近未来とは結局いつ頃の事なんでしょうね。今はもはや、近未来映画が制作された頃の「未来」をとうに追い越してしまっている現代に生きているって事なんでしょうね。) しかしながら、どこかチグハグで嘘くさいグロンスキーの切り取るその風景は、紛れもなく今現在のロシア・旧ソ連地域で現実にある風景なんです。






写真展はそんな良い意味での違和感に満ちた楽しいものでした。グロンスキの選んだプリントが1枚添えられている写真集を購入してしまったのですが、そのプリント、日本のお客さんには、この写真(左)が人気だったそうなのですが、ご本人のイチオシは、こちらの写真(上)だそうです。勿論私はご本人のイチオシを購入しました。 (もうひとつのも好きだったんですけどね。折角だから・・・・。)




ここで私が勝手にカテゴライズしたグロンスキーの作品をいくつか・・・・。

【snowscape】
殺風景な雪のロシア郊外の風景ですが、社会的なメッセージはあまり表に出ず、ちょっとユーモラスに、ちょっと可愛らしく、ロシアの郊外でそこで暮らす人々が織りなす風景という趣です。画面は白く、寒い戸外でアクティビティーを楽しむ人々がぽつぽつとカラフルに散りばめられています。 ちょっと見ていると、まるでペイント作品のようにも見えてきます。





【Ophelia】
これはただ単に、緑盛んな風景を見て絵画の「オフェーリア」を連想したに他ならないのですが、違うのは、辺りにはゴミが散乱していたり、恋人たちが寛ぐ木立の背後には、殺伐とした原子炉がそびえ立っていたり。人工建造物が創りだす荒涼とした風景と人々の営みが互いに寄り添っている風景です。





【emigration to new planet】
とても目を惹くSituationです。地球ではもはや暮らせなくなった人類が太陽系の外にその活路を見出し移民していて、至極人工的な自然環境の中で、かつて地球で営んでいたような楽しい余暇の過ごし方を全て後天的な環境の中で健気に再現しようとしている・・・・、そんなB級映画のSF映画の一場面を連想してしまいます。 この場所は、きっと大きな透明なドームか何かで覆われているに違いない、と考えが飛躍してしまいそうな人工的な風景が繰り広げられています。




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by sanaegogo | 2014-10-18 00:00 | art | Comments(0)
Mark Borthwick 「Abandom Reverie`」




マーク・ボスウィックのスライドショーは、もしかして今年観た写真展や絵画の展覧会の中で一番好きで、一番印象に残って、一番いつまでも忘れがたく、一番も一度観たいと願うようなものでした。 こじんまりとしたTaka Ishii Gallery Photography / Film の壁いっぱいに投影された3面のプロジェクションは、眼で見て感じるだけでなく、ボスウィックの創りだした幻想的な現実世界の中に自分自身が唐突に入り込んでしまったような気がします。 スクリーンから僅かに撥ね返って来るプロジェクターの光が皮膚の中から体の中に沁みこんで行きます。 カルーセルが1回転するのに40分くらい、ボスウィックの創りだした色鮮やかなイメージの光に浸っていましたが、カルーセルのカシャ、カシャという音も心地よく、どこからか聞こえてくるボスウィックがしたためたという詩の朗読にも不思議な感じを覚えました。実は「幻想的」とは言ったものの、それとは少し違うのです。自分は現実世界にいるという自覚があるのだけど、どの現実かが解らない非現実的な現実。 (ボスウィックはファンタジーの世界ではなく あくまでも現実の風景を捉えているのです。素晴らしい!) スライドが次々と創りだしていく空気を感じ、空中を漂っている声を感じている・・・っていうような感じ。(上手く言えませんが。) 「聴く」「視る」みたいな能動的な感覚とは違う、もっと自然体な感じ。 Surrounded、包まれている、そんな感覚を覚えるとても心地よい世界観でした。







マーク・ボスウィック(1962年ロンドン生まれ) は、ニューヨークを拠点に活動する『Purple』『i-D』といったファッション雑誌や、数多くのファッションブランドとのコラボレーションなどで知られているファッションフォトグラファー。 近年はファッションの領域を超えて、音楽、映像、詩など様々なメディアを横断的に行き来するような作品を手掛けています。 しかもそのつなぎ目を全くと言っていいほど完璧にかつ自然に融合した独特の不思議な世界観を漂わせています。 彼が撮影した写真作品についても、私の個人的な好みもあるのですが、そのaccidentalな色彩にとても惹かれ、accidentなのか、predictionなのか、その境目もまた見事に曖昧化されていて、自然に馴染んでいます。






光を追い、光が生み出すすべてのもの、色彩、ハレーション、フレア、そして闇までもその術中に収めているようです。一見劣化しているかのように見えるその投影されているスライドの情景に観る人はどことないノスタルジアを覚え、現実の中に身を置きながらそれぞれが抱えている「何処か」に帰っていくような気持ちを想起させられるのでしょう。 3面のプロジェクションもトリプティクスのような構成で、その漠然としたストーリーの中に溶け込んでいくような錯覚を覚えるのかも知れません。
もう会期は終わってしまったのですが、もう一度観たいです。 そして あの感覚の中に浸りたいです。


Mark Borthwick 「Abandom Reverie`」
2014.09.20 Sat – 10.18 Sat
Taka Ishii Gallery Photography / Film
http://www.takaishiigallery.com/jp/archives/11575/






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作品をもっと紹介したいな、と思っていたら、まとめている方がいたので、ここに紹介します。
http://matome.naver.jp/odai/2137293016689383201?&page=1

Mark Borthwick Project (2010)
http://www.superheadz.com/mark/about/




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by sanaegogo | 2014-10-11 00:00 | art | Comments(0)