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「惑星探査」 planetary exploration
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今年も1月が「あっ!」と言う間に過ぎて、もう2月になってしまいました。 ここ数年、本当に時間とか月日の経つのが早く感じられますが、これが『加齢』ってやつなんでしょうかね。 昨年(2013年)の今頃は、仕事と仕事の(例年にはない少し長めの)インターバルに入っていて、そして、とっても寒かったのを覚えています。(でも数値的には今年の方が寒いんでしょうか。その辺は定かではなく、あくまでも体感です。) ここ数年、冬に雪が見たい衝動に駆られる事が多くて、学生時代はスキー部に所属してましたが、(「凍ってるね。」世代です。)、その時の感覚とはまた別なものに突き動かされて、1月のこの時期に北海道に雪を見に出かけました。

一番の目的は、厳寒のモエレ沼公園。(写真はWebから取った素敵なモエレ沼) 雪山とか、北海道の陸別町とか、本当の厳寒地をご存知の方は札幌郊外で何を抜かすか、とおっしゃるかも知れないですね。 実際私が学生の時に籠っていた志賀山とかの方がよっぽど厳寒だったと思いますが、雪深いこの時期にそんな所に出かけていく酔狂な人もいないだろうと、ひと気のない雪景色を撮りたかったのです。その時の写真をPhoto Bookにまとめました。その時感じた事も、このPhoto Bookも、転機とまでは行きませんが、何かきっかけというか、とっかかりというか、そんな『何だか解らない何か』を味わったような気がするので、1年経ち、あの時のあの感覚とか、月日を経て、これを作った時感じたざわざわした気持ちのザワつきとかを忘れないように、備忘録として書きとめておこうかと思ったんです。







今まで、折に触れて、何冊かPhoto Bookは作っていますが、今までのはまあよく言う、『心に留まったものを写真に収めています』みたいな、言うなれば継ぎ接ぎ(ツギハギ)のものを後付でテーマに沿って流していった感じのもので、それはそれで「あり」だとは思うのですが、そうではなくて、何かの目的を持ってそこに行って、そこで完結をして、そこから自分の感覚に即したストーリーを与えていく、みたいな作業をしてみたくなったのです。 その場所で感じた感覚をある種のストーリーに置き換えてなぞっていって、かつ、観てくれる人が「観終わった」と感じられるような、上手くは言えないのですが、そんなPhoto Bookです。 観終わって、「ふうん」という、「あ、これで終わりなのか」 みたいなものが多かった今までの自分のやり方とは全く違うものです。 勿論、先にも言ったように、撮り溜めてきたイメージの中で起承転結とか序破急のようにクライマックスを作ってある種のストーリー性を持たせて写真本を創る人は沢山いますし、名だたる作家の方はみんなそうなんだと思うのですが、自分にはまだ写真だけでそこまでの構成する力はないので、ストーリー仕立てに逃げる安直な感じは否めないのですが、無意識に今までとは発想を変えてみたのかも知れないですね。 私にとっては、(あくまでも、私にとっては)、あるきっかけにはなったと感じてます。




2012年の夏にワークショップに参加したのですが、そのフォローアップが昨年(2013年)の夏にあって、そこでポジティブな講評をいただいたのもとても励みになったし、この構成を完成した時のうっすらとした達成感を思い出して、あの時の感覚を忘れないようにしよう、と。 (成功体験と呼ぶにはまだまだではありますが・・・。)

その時のテキストです。
――― これまでのように偶然遭遇した場面ではなくて、そこをリサーチして、そこに赴いて、そこに必然的にあるナニモノかを撮影し、ひとつの流れの中でストーリーのようなものを与えてみる、という事をしたくて、この「惑星探査」をつくりました。
次のページを捲りたくなる、次の展開を知りたくてワクワクする、本全体で何かひとつの完結し、そして余韻がある世界観をあらわす事を目指して、この本をつくりました。
ひと気のない、だだっ広い雪原を撮ってみたくて、北海道の郊外のこの場所を訪れた時、自分の他には周囲に誰もおらず、全く違ったどこか別の惑星に来てしまったように感じました。 遠くに小さく動いている人影を見つけた時に、まるで同志を発見したかのような感覚を覚えました。『この世界には知らない同士だけど私達だけ』 そんな錯覚を感じる事が出来たのです。



















これはこれで、自分のスタイルのようなものがひとつ見つかったような気がしたので、次回作はもう少しテイストの違ったものを考えています。 さっきの話とは矛盾するのですが、クライマックスがあるようでないような、フラットに時間と空間の流れでストーリーが展開していくような、観ている人にストーリーを委ねられるような、そんな本です。 これは、あまり作為的なストーリー性に安易に堕ちて行きたくない、という思いからくるものですが、難しそうですね。 頭で考えるのではなく、まぁ、とにかく選んで並べて、並べ替えて悩んで、だと思うのです。(その前に、撮って、か!そう、撮れたから作る、ではなくて、作るから撮る、なのです。) 『惑星探査』は、もう過去のものとして、次なる何かに向って行きたいと今は思っています。 でも、(何所かは判らないけど)向うべきところへ向っていく軌跡として、色々な人に観てもらえたらいいなぁ、などと感じています。

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「惑星探査」 planetary exploration
撮影: 2013年 冬(2月)
撮影地: 北海道 札幌 モエレ沼公園 円山動物園 北海道大学札幌キャンパス
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余談ですが、フォローアップの後の懇親会で突然、「アナタのは、『星の王子様』に感化されてるよね。ばっちりその世界観だよね。」とコメントをいただきました。 正直全くそんな事は意識してなかったので、かなり意外だったのですが、何だか気持ちの良い「気付き」でした。 自分が全く気付かずしていた事に気付かされるのは気持ちの良いもので、実際少女の頃はかなり「星の王子様」っ子だったので、自分の気持ちに「寄せた」ものであれば尚更です。 「自分でも解らなかったのに見透かされてる?」 と、その洞察力に度肝を抜かれました。

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by sanaegogo | 2014-02-02 00:00 | activity | Comments(0)
Wolfgang Tillmans "Affinity"
Wolfgang Tillmans
ヴォルフガング・ティルマンス
"Affinity"
2014年1月18日(土) - 3月15日(土)
WAKO WORKS OF ART
http://www.wako-art.jp/top.php





ティルマンスに関しての知識というか、造詣はそんなに深くは無いのですが、私の中でティルマンスといえば、窓辺やキッチンのテーブルに無造作に雑多に置かれた日常使う品々の「何気ない」スティルライフの写真です。 ごちゃっと置かれたテーブルの上の唐突な取り合わせの品々や窓のある小さなスペースの上に置かれた萎びかけた鉢植えなど、映画のストーリーの中のあまりきちんとした生活をしていない人の生活観が滲み出るような写真です。 「何気ない」とよく言われますが、私にとってはそれらのヒトコマは何か妙に「意味ありげ」に写ります。 家に帰ってきて、がしゃんがしゃんと物音を立てつつ帰って来た時の儀式のように基本動作を行って、カバンや上着を無造作にソファの上に放り投げ、がちゃがちゃと冷蔵庫を開けて、扉を閉めもせず牛乳のビン(これは外国サイズの大きいやつ)から直接牛乳をがぶがぶ飲み、そしてまた荒々しく扉のポケットに戻し、ばたんっ、と扉を閉める。 ・・・・ような人が住んでいる家かな。 これはちょっと飛躍し過ぎかも知れませんが、そんなイメージを喚起させてしまうような意味深長な写真です。 そして、幅広い感触のシリーズに取り組んでいるティスマンスの中では、この手の写真が一番好きです。密度の濃いカラーと絶妙の対象物の配置。ティスマンスの赴くところにはいつもこんなに絶妙のシーンが展開されているものなのか、と不思議な感さえするのですが、実は光や影の効果を仔細に取り入れて、言わば入念なセットアップの中で撮られている、という話も聞きます。全くの偶然の産物ではないのですね。


©WAKO WORKS OF ART / Wolfgang Tillmans



この写真はとても好き。 暗い室内で撮影された1枚ですが、窓の外は夜なんだと思うのです。







あとは(コンコルドシリーズも含めて)空にベクトルが向いた写真も好きです。
ティルマンスが天体少年で、
天体観測が彼の写真人生の始まりだったという話は有名ですが、
今回の展示でも密度の濃いカラーの空の写真がありました。



写真集『Neue Welt』から

©WAKO WORKS OF ART / Wolfgang Tillmans



ティルマンスといえば、前にも述べたとおり、幅広いテーマというか、シリーズというか、で制作をしていますが、どれも本当に持ち味が違います。 多様な表現力でとにかく色々撮る人、というイメージなのですが、どれも趣が違うのに、どれもティルマンスっぽいんですよね。 ざっとそのシリーズを挙げてみると・・・・、
● 意味深なムードのスナップ的ポートレート
● 壮大で神々しささえ感じる広い風景
● 日常の窓辺やテーブルの上のスティルライフ
● どきっとするようなヌード
● 宇宙との繋がりを想起させる天文学的イメージ、
● アブストラクトな抽象作品
ざっとこんな感じになるのでしょうか。 今回の『Affinity』でも、これらひと通りのものを観ることができるある意味贅沢な展示でしたが、言い換えれば、この中のどれかひとつのテーマを取り上げるのではなく、全て並べる事が『Affinity』なんでしょうか。 『どれも趣が違うのに、どれもティルマンスっぽい』です。彼は何故この展示のテーマを『Affinity』にしたんでしょうか。 興味が沸いてきました。

ティルマンスは、作品を額装して水平を測ってきちんと並べるのではなく、テープやピンで壁に直貼りする展示もよく行うという事で、今回も自ら何日もかけて自分でキュレートをしたということです。『FESPA Digital / FRUIT LOGISTICA』のコーナーでは、フォーマットもさまざま、大小さまざまな作品が壁に直貼りされていて、配置も決して人々の眼線上ではなく、その範囲は屈まなければ観れない足許にまで及んでます。


壁にさまざまなフォーマットの写真が直貼りされています。








足許のこんなところにも 貼ってあります。








この『FESPA Digital / FRUIT LOGISTICA』はちょっと面白い写真集で、ティルマンスがここ数年ハマッているというレイヤー(多重構造)での表現がふんだんに用いられています。 今回のインスタレーションでも写真集そのままの構成も観ることができました。FESPA Digital とは、毎年世界各国を巡回している大型プリンターのトレードショウみたいですね。フルーツの鮮やかな色彩と印刷機や様々な機材のメタルでハードな質感とか、それらが幾重にも重なって、雑多で半ばカオスで、とりとめなく直感的で、唐突な感じでもある。 これぞまさにティルマンス。このインスタレーションはかなり必見で、ティルマンスらしさを存分に味わえた気がします。



写真集『FESPA Digital / FRUIT LOGISTICA』
カラフルでミクスチャーでレイヤー。 ひとつのページの上で 色々な要素が重なりあっていて その密集感ったら。
技術や商業的場面を題材にしているのも どこかシニカルな逆説的、かつ世代に即している面白さがあります。





観終わって、ティルマンスという世界をつぶさに理解できた訳ではないのですが、より深く知りたくなる気にさせてくれる刺激的なインスタレーションで、直感的で弾けるような感覚と静かに内省をするかのような佇まいが共存しているような表現世界です。


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by sanaegogo | 2014-02-01 00:00 | art | Comments(0)