BRUTUS 2004年 8/15号 「ブルータスの写真特集 BOYS' LIFE」 No.553 少年は写真を撮るために生まれてきた。
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とっても古い写真です。 この写真はマイアミ空港の裏手で撮影したもの。 フィルムの写真です。かつてナッソーに住んでいた頃、マイアミの友人の家に遊びに行って空港でピックアップしてもらって、友人の家に向う途中、空港の駐車場での夕陽です。 写っているのは多分、アメリカン航空のイーグル機。 ナッソー⇔マイアミ間でバスのように頻繁に行き来してたプロペラ機です。 何故にこんな古い写真を引っ張り出して来たかというと・・・・。 ティルマンスの『CONCORDE』へのオマージュ(のつもり)です。ティルマンスのコンコルドの話を聴きながら、(僭越ではありますが)この写真の事を思い浮かべてました。 ティルマンスの話をしてくれたのは、フクヘンこと鈴木芳雄さん。 この日、青山ブックセンターのスクール(青山ブックスクール)で行われた「本・現場・美術」~〈フクヘン。〉の仕事~ に行って来ました。

「本・現場・美術」~〈フクヘン。〉の仕事~
第6回:写真家たちとの対話。 
http://www.aoyamabc.jp/culture/fukuhen-wksp6/
2013年6月28日(金) 19:00~21:00
青山ブックセンター本店 小教室


「本・現場・美術」は、これまでに5回開催されていて、これまでは、奈良美智、伊藤若冲、杉本博司、山口晃(敬称略)などとのお仕事をたっぷりと豊富なエピソードでフクヘンが語る、というもの。私は番外編の『美術手帖』×『芸術新潮』「フランシス・ベーコンを編集する。」に行きました。 そしてこの度は、写真ネタ、と言う事で、これを逃す手はありません。 今後も続くので、感心のある方は是非。 (個人的には若冲、行こうとしたのに行けなかったのが心残りですね。)

今回は、特定のどなたかにフォーカスするのではなく、1冊のBRUTUSをピックアップして、写真、写真家について語ってくれました。 "BRUTUS 2004年 8/15号 「ブルータスの写真特集 BOYS' LIFE」 No.553 少年は写真を撮るために生まれてきた。" その表紙を飾っているのがウォルガング・ティスマンスの「CONCORDE」の中の1枚。 普通の民家の屋根の合間を抜けて、キーーンッとコンコルドが上昇していくところを捉えたものです。 ティルマンスは天体への興味から写真を始めて、90年代にはイギリスで『I-D』 (ここではホンマタカシさんとは被ってはいないそうですが) などの雑誌でファッション写真の仕事に携わったそうです。 90年代の後半から作家としての活動が本格化して、美術館やギャラリーなどでの展示を中心に活動しています。 天文少年から被写体の興味は飛行機へ。 写真少年の道筋としては王道です。 その少年のような憧れを形にしたのがこの「CONCORDE」。 ティルマンスくらいになれば望めばコックピットの中を見せてもらったり、機足まで近寄れたり、果ては自腹ででもコンコルドくらいは搭乗できたのでしょうが、ティルマンスはあくまでも地上から、「あ、コンコルドだ!!」と指を指して興奮気味に見上げる少年の眼線に拘ります。 フクヘンもTwitterで、『鈴木芳雄 ‏@fukuhen コンコルドに乗る贅沢を享有し、それに酔う成功者はある意味、尊敬に値する。しかし、遠くから眺め、そこにあるすごいテクノロジーを想像する少年の憧れを作品に込めるためには彼のやり方こそ正しいと思った。ティルマンス『CONCORDE』にコックピットの写真がないのには理由がある。』とツブヤいています。 どの写真もどの写真も、同じ規格で少年が一生懸命(撮り)集めた空を劈くコンコルドの勇姿が並べられています。 こんなコンセプトで、この「BOYS’ LIFE」は構成されています。



[features]
  • ヴォルフガング・ティルマンス 作品&インタビュー「いつでも挑戦する姿勢でいたいね」
  • ジャック=アンリ・ラルティーグ 写真機は僕らに魔法をかける翼。
  • ピーター・ビアード 撮りたいものだけを撮るために渡ったアフリカの大地。
  • イサム・ノグチ 永遠のディアスポラを生きた男の、幸福の記念写真。
  • 奈良美智 僕にとって写真は瞼の裏に映る残像のようなもの。
  • 杉本博司 ハイアートの巨匠による少年写真を発掘!
  • ホンマタカシ ライカがこんな町で生まれたっていうのがうれしいな。
  • スティーヴン・ショア 早熟なカメラ小僧が捉えたニューランドスケープ。
  • スレイター・ブラッドリー 大人になることの不安と抵抗を覚えながら揺れ動く少年。
  • ルイス・ボルツ 殺風景な工業地帯にだって僕たちのアルカディアはある。
  • ディーン・サメシマ 「ボ-イズ」たちのユートピア、の昼間の素顔。
  • 佐内正史 俺は俺の車を撮る。俺の前の車はマーク2。
  • クレイグ・マクディーン クルマが好きで好きでたまらない!!
  • 野口里佳 どこまでも遠く、高く。彼方を見つめる遠視者の視線。
  • 森本美絵 忘れられた風景をとどめる寡黙な視線。
  • フィッシュリ&ヴァイス エアポートは永遠の夏休みを約束するモラトリアム。
  • 大竹伸朗 過ぎ去る時間や思いを一瞬にして定着できる装置。

この中からフクヘンがいくつかピックアップして、少年の憧れを象徴するような写真集の紹介が続きます。 自分の好きなものを集めたカタログのような構成。 ストーリーも変化も流れもないのだけど、その淡々と並べられた写真を見ていると、だんだんと作者の気持ち、高揚感が乗り移ってくるような気持ちになります。思えば時計や車のカタログ、動物や植物の図鑑などは見ようによっては素敵な写真集ですよね。 自分の好きなもの写真を集めて、繰り返し繰り返しそれを眺めてわくわくとする。 まさにこの「写真集」の原点ともいえる少年の行為を、この号が発売された当時全盛で半ば自意識過剰気味のGirly Photoと対比させるべく(対決とも言えるか?)編集し、老若男(女)の写真少年達へ送る応援歌としたかったのだ、とフクヘンは語っていました。女子(と、自分を呼ぶにはおこがましいが)の立場から言うと、この充分matureな男性諸氏が「少年時代」についてある種の懐かしさをもって語ってるのを聞くと、女性陣はいつも胸がキューーンとして切なくなってしまったりするのです。 こんな小さな心の隅に眠らせているような密やかな気持ちをひとつの雑誌として構成させるまでに膨らませ、編集者は雑誌を創ってるんですね。 もちろんそんな雑誌ばかりではないでしょうが、ほんのひとつまみの想いからこのラインアップまでもってくる事が出来るフクヘンの編集者としての『持ち札』の抱負さは、流石としか言いようがありません。 これが書物やネットからの情報ではなくて、実際に取材に赴き、当人と対話をし、同じ場所に居合わせ現場を確認しての話なのがすごいのです。 この日も豊富な余談、雑談、四方山話を披露してくれましたが、これが『聞いた話』ではなくて『体験談』だからすごいのです。 私自身は選択肢として雑誌や書籍の編集者になりたい、と希望した事は今までなかったですが、ひとつの自己表現を具現化した仕事としては、アーティストに負けずとも劣らずやりがいのある楽しい仕事なのですね、と今更ながら思ったりしました。

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by sanaegogo | 2013-06-28 00:00 | activity | Comments(0)


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