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Francis Alÿs (フランシス・アリス展) メキシコ編 at MoT
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以前近美で行われた『ヴィデオを待ちながら』という展覧会を観に行って、例えばアンビエントな映像や映画のようなストーリー仕立てのMV、それにCGを駆使したPVなどを観て、友達と某かの感想を言いあったり、どこが気に入ったかを話したりするのとは全く違う次元の、『実験的』で難解でとっつき難い映像作品を観て来ました。そんな中でも親しみやすく(と、感じました) 素で楽しみながら観たのが、フランシス・アリスの《リハーサル1》という映像作品。(フランシス・アリス (ラファエル・オルテガとのコラボレーション) 《リハーサル1》1999-2004年 Courtesy the artist and Galerie Peter Kilchmann, Zurich) ちょっとバカバカしくて、品よく言えばウィットに富んでいて、思わず笑っちゃうような作品だったのをよく記憶してます。展覧会も最終段階に入り、難解な作品のラインナップにオーバーヒートしそうな頭に心地よい可笑しさだったのをよく覚えてます。そのフランシス・アリスを都現美でやると言うので、あの時のような作品をまた観たいなー、と思い出かけて参りました。

Francis Alÿs フランシス・アリス展
第1期: MEXICO SURVEY メキシコ編
2013年4月6日(土) ― 6月9日(日)
Museum of Contemporary Art Tokyo [Press Release]
http://www.mot-art-museum.jp/alys/

まあ、あの時のように全てが全て「ちょっと可笑しい」作品ばかりではなかったですが、やはりこのフランシス・アリスという人は、「詩的でウィットに富んだ表現」では定評があるようです。ベルギーに生まれて、現在はメキシコに在住して制作活動を行っています。ここ最近人間の内面を深く見つめる様な展覧会を観る事が続いたせいもあるかも知れませんが、非常に外に向かっていて何かを発し問いかけているような作品達だったように感じました。都市の中に潜む様々な問題にフォーカスを当て、その社会的問題、政治的問題をあぶりだす皮肉/風刺のこもったユーモアには、個々の個人的な事柄ではなく、社会の中で社会の方を見て制作をしている姿勢がよく顕れています。(語弊があるかも知れませんが)またこの『メキシコの都市』というのが、こういったsituationの作品によく合うんだと思います。何でもありの雑多で坩堝的な状況は、彼に制作をインスパイアするには絶好の場所なのだと思います。
いくつか気に入った作品を。

≪ Turista/観光客(1994) ≫


"大工や配管工に並んで、自分の表現行為(制作)をひとつのサービスとして提供している。"
と、フランシス・アリスがアーティストとしての姿勢を表明した作品。
背の高いアリスと周りの小柄な労働者達の何だかちょっと滑稽な対比がいいですよね。


≪ A Story of Deception/虚偽の物語 (2003-2006) ≫


地平線まで続く道の彼方には蜃気楼。
進めども進めども決して到達できない。
そんな表現をアリスはラテンアメリカの近代化の歴史となぞっているようですが、
私はただ単純にこんな風景が好きで、ただ見入ってしまいました。


≪ Sleepers/眠るものたち (1999-present) ≫


アリスが撮り続けている路上で寝ている人々(時々、犬)をデュアルのプロジェクションで見せています。
物凄いローアングルから撮っていて、犬目線、寝てる人目線が面白いです。
しかし、路上で寝ている人と犬の何というバラエティーの豊富さ!
これこそ、先に述べた、『メキシコシティはぴったりの街』というのを如実に顕してます。


≪ Patriotic Tales/愛国者たちの物語 (1997) ≫


ソカロ広場に立つポールの周りをアリスと羊たちがぐるぐると回っています。
羊が1匹、1匹、また1匹と輪から外れていき、やがてアリス自身もいなくなってしまうそうです。
実はその前に、1匹1匹増えていくくだりがあったそうなんですが、私は見逃しています。
しかも私は、アリスが居なくなるところも見逃していて、
実は、羊が1匹ずつ輪を外れていくのに、羊の数が減らずにずっとポールの周りを回っている、
という作品だと思っていました。
これも実際の政治的事件というかエピソードに准えてます。


≪ Tornedo/トルネード (2000-2010) ≫


(確かどこかで55分という表記を見た気がするのですが)一番時間を割いた作品です。
空いていれば、クッションが置かれたマットの上で寝っ転がって鑑賞する事ができます。
寝ている姿勢で観ると自分も竜巻の中に入っていくようです。
よく観るとフライヤーには、竜巻に飛び込んでいくアリスの姿が映っているんですね。
竜巻のゴーゴーという音が何処となく、ホワイトノイズのようにも聴こえてきて、心地よい感じさえします。
思えば私は砂漠が好きなんです。
砂漠のサンドベージュと空のペールブルーのコントラストが好きです。
アリスの反復運動が心地よい退屈です。


≪ Choques/衝撃 (2005) ≫


曲がり角で交錯する男と犬。男とカート。 『カット』のサインを出すように現れる別の男。
これらが9台の異なったカメラから撮られていて、その9台のモニターが展示室の順路に散りばめられ配置されてます。
私は2台目を見て作品の流れは理解したのですが、何台目かにまた犬目線のカメラの映像が出てきて、
それには思わず笑ってしまいました。


と、こんな感じですが、フランシス・アリス、深く読めばそこには政治不安や社会問題が見て取れるのですが、単純な見たままの感想や感じ方を受け容れてくれる余地があるシンプルさと明解さも同時に持っていると思います。内容は深いのですが、ちょっとリラックスして観られる作品です。 (って、そういうのばっかり好んで並べてしまいました。もっと社会派のぴりぴりしたのも他にありましたけど。悪しからず。)

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by sanaegogo | 2013-05-04 00:00 | art


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