内田ユキオ氏が語るPHOTOGRAPHY @表参道ヒルズ vol.3
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このところ大分生活が落ち着いてきて、何となくある一定のペースと言うかテンポが出てきたので、また後回しにしていたやつをバックデートでエントリーですが。 もう大分前の事ですが、表参道ヒルズで行われた内田ユキオさんのトークショーについて。表参道ヒルズでやっていたPHOTOGRAPHYに際してのものです。PHOTOGRAPHYは、ウィリアム・エグルストン、スティーブン・ショア、ナン・ゴールディン、マーティン・パー、テリー・リチャードソン、ライアン・マッギンレーの6名がFUJIFILM のデジタルカメラXシリーズで思い思いに撮り下ろす・・・・と言ったものでした。内田ユキオさんは、これらのフォトグラファーの作品や写真集に造詣が深く、Xシリーズの名手(?)と言うような立場でレクチャラーとしてお話をしました。この内田ユキオさん、ご存知の方も多いのかと思いますが、もともとは公務員で、カメラ好き、写真集好きが高じてフリーの写真家になり、個展を開いたり執筆をしたりしている方だそうです。(自称、「最後の文系写真家」との事。) 謂わば、素人さん(と言うか、ハイアマチュアと言うべきか?)から、きちんとした写真教育を経てなくても写真家として世に出たひとで、まあこの辺の経歴がワタシの興味をそそり、いちファンから評論のような事をするに至った人はどのような話をするのだろうか、と聴いてみたくなり行ってみる事にした訳です。
色々なところで講演や写真教室をやっているような人なので、話す事には長けている(慣れている?)のだろうと思ったのですが、この日はちょっとグダグダな感じだったような気がします。6名のフォトグラファーの写真に造詣が深いというので、最初に『順番にひとりひとりの写真の見どころとかお話したいと思います。』と言っていたので、『うんうん』と期待をしていたのですが、途中からオーディエンスに質問を受け付けてそれに答える形式に変わってしまって、聴きに来た人は皆、半ば彼の薀蓄のような話を聞きたくて来ているだろうので、それらのフォトグラファーについて他の聴衆も聴きたくなるような穿った感じの達人的な観点での質問がどう捻ってもたいして出る訳はないと思うのだけど、案の定質問はあまり盛り上がらず、果ては、場の雰囲気を打開するために助けを求めるように内輪の人や知り合いに当事者だけに解るようなトーンで質問を求めるような状況に陥り、何だか消化不良と言うか不完全燃焼と言うか、そんな感じのトークでした。もっとガンガン内田さんの言いたい事を言い放って進めてくれればよかったのに、と思います。コネタとか、裏話とか、人となりのエピソードとか、『へーっ』と思うような話を聴きたかったし、そもそもは、その6人のフォトグラファーの写真の、漠然と見ていたらなかなか気が付けない見どころとか、そんな話が聴けると思っていたので、これはちょっと残念でした。まぁ、その系の話が全く出なかった訳ではなかったので、『そこ、聴きたい、そこ、もっと。』と言うところで話が流れてしまったり、中途半端で終わったりしたのはいただけない感じでした。(痒い所に手が届かない感じ。)
そんな中でも、面白かったコメントを挙げます。

≪William Eggleston≫


この6枚の写真は、エグルストンが始めてデジタルを使用した写真だというのは前回も触れましたが、これをどう観るか、です。エグルストンが撮影したと知ってみるのと知らずに観るのでは印象が違ってきます。もしかして、エグルストンっぽく撮られている誰か別の全然素人が撮った写真としか思わないかも知れないし、(つまりは、『えっ?エグルストンだったの?』と言う感じ。)、 果ては、その良さが全然解らないと言う人もいるかも知れません。(現に聴衆の中にはそう言う人もいました。) 写真は誰か著名な人が『これいいね。』と指を指せばそこで評価が決まるという危うい前提の基に成り立っている、と内田氏は言ってました。過剰な拒絶反応を恐れずに口にしたこの辺りは、権威ある賞の受賞などとは別の道で叩き上げてきた人ならではの言い口だと思うし、内田氏のバックグラウンドならではと思い、いいぞっ、もっとそこを、と思ったのですが、それ以上真っ向からあまり深くは入り込まず、この辺の彼なりの評をもう少し聴きたかったりしました。

≪Terry Richardson ≫


この写真は、フラッシュを使って一発で撮った写真だそうですが、テリー・リチャードソンのふざけた感じを良く顕しているのだそうです。(多分、この写真展の趣旨、メーカー推奨のカメラで撮ってみよう、と言うのを半ば舐め腐った態度で臨んだと言う事を言いたかったと思うのですが、メーカーの人に遠慮したんでしょうか。) 頑張って誠実に機会に臨むような態度は全くなく、スタジオにあった花をただ、1枚、2枚と写して出してきたようです。ある意味、そこにテリーという人となりが出ていて面白いのですが、フラッシュの使い方は見事だそうで、『フラッシュをちゃんと使えるほどの頭があったんですね。』などとも評していました。

≪Ryan McGinley≫


反して、大御所たちと肩を並べて選出された最年少のライアンは、臆する事なく、遠慮や年長者に対する気遣いみたいなものは全くなく、堂々とガッツリと気合を入れて撮り下ろして来て今の自分の若さと存在感を見せつけているような感じにも取れました。年功序列みたいなものに対する控えめな態度も感じさせず、若さと勢いを見せつけて、いつもの自分の作品の発表に臨むように撮ってきた、と言うのが感じられて面白かったと言います。これはワタシも同感。

≪Nan Goldin≫


彼女の写真が一番解りやすいのではないでしょうか。と。一見解りにくそうな、コンセプチュアルな場面を写してますが、どこかしら見ている者の気持ちに引っ掛かっていくざらつきのようなものが満載で、すんなりとしていて、眼が肥えてないとその醍醐味が見つけられないような写真に比べて、喰いつくところは一番アピールされているのではないか、と、『どの写真が一番気になったか。』と言うので挙手を聴衆に求めた時、意外に彼女の写真に手を挙げる人が少ないのを受けてコメントしていました。

マーティン・パーとスティーブン・ショアについては、特に記憶に残っているコメントはなかった気がします。

≪Martin Parr≫



≪Stephen Shore≫



やはり、大御所だけあってか、エグルストンの写真についてのコメントが多くあった気がしますが、彼の言わんとしている事は、『これをエグルストンが撮ったと明白になっている状況なので、訪れた実績のあるカメラマンの人とかが「うーん、流石にエグルストンだ。いい写真とるねぇ。」とか言いますが、そうじゃなかったら、この写真、すごい!と思いますか?』などと言っていて、その辺りが正直な気持ちなら、主催者のことなど気にせずに、彼なりの感じ方をもっとつまびらかにしたら、また違う切り口の面白いトークになっただろうに、と感じてしまう歯切れの悪さが残りました。次は是非、忌憚ないトークを期待したいところです。 (個人の感想です。)

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by sanaegogo | 2013-01-20 00:00 | art | Comments(0)


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