Robert Mapplethorpe (ロバート・メイプルソープ) flowers
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折しもレスリー・キーが問題の男性写真集で警視庁保安課に逮捕された事件が数日前にありました。まあ、それと同列に扱っては余りにも失礼、次元が違うのですが、かつて刺激的で過激な性描写の写真の数々を世に残してこの夭逝したロバート・メイプルソープの写真展に行って来ました。しかし、今回は彼のそういったシリーズではなくて、彼が残した花の写真です。自分自身、性器が露出した系の写真は男でも女でも苦手なのですが、(とは言え、エゴン・シーレとかは好きなのですが・・・(矛盾))、今回はその体(てい)のものではなく、私が好きな系、花の写真です。メイプルソープは生涯いくつかのシリーズの写真を精力的に撮影してます。主に4つ。それはスティルライフ、ポートレート、ヌード、セックスの4つで、今回はそのうちのスティルライフの写真、印象的に構図の中に配置された花の写真展です。

Robert Mapplethorpe (ロバート・メイプルソープ)
flowers 写真展
■会期:2013年2月1日(金)~14日(木)
■会場:別館2階=西武ギャラリー

メイプルソープのシリーズのうち、SMプレイやゲイの絡みの写真などは彼のいち側面である過激なセンセーションを物語るようなものですが、彼の花の写真だけは、何故だかそこに静かな精神世界があり、構図と配置を旨とした日本の華道や日本庭園の作庭のようなものと通じるような気がしていて、自分の中では過激なセックスやヌードを撮った他の写真とは一線を画しているような気になっています。と言っても、前に挙げた理由から、パンクな感じの生々しい写真はあんまり見ていないので、それほど彼の写真を数多く見ている訳ではなく、メイプルソープと認識して見てきた写真の殆どが花の写真だったという背景が個人的にあります。(あとはポートレイトも若干かな。)
殆どがスクエアフォーマットで統一された100点余りの写真達が順路にそって連なっていく様はまさに圧巻で、その点数の多さにもかかわらず、花の質感・透け感、花弁の奥に作り出された陰影、活けられた花全体のフォルムなどが均質になっていて、撮影技術のみならずその画面を作り出す技量の卓越さには眼を奪われました。写真展や写真集の構成を考える時、ストーリーやその意味、意図などを(後付でも?) 何か明確にして打ち出して観る人に訴えないといけない、との考えに固執しがちな一面がありますが、メイプルソープのこれらの花の写真にはそう言った説明的なものは一切無く、あえて言うならその根底に一貫して流れているのは彼の持つ美意識と対象となる花に投影した自身の心象世界があるのみ、と言った感があります。その鉄壁の美意識が、ともすればエロくグロいだけになりがちなショッキングな性的素材の写真を撮るにしても、彼の写真をある種の芸術性が顕れているものに高めている、と言った事もあるようです。光、影、花、それをとり巻く空間、余白、全てが絶妙にして完璧でした。メイプルソープの花というと黒く潰した背景にそこだけ光を受けて浮かび上がった花、という印象が強かったんですが、今回この「Flowers」を観て、その背景に映る影の様相もとても印象的でした。どこの何が落としている影なのだかはその写真からは知れないのですが、その影の形状、作り出す構図・配置もまた完璧でした。花の作り出す丸みや柔らかいアールの花びら、茎のしな垂れようとは対照的に幾何学的な影が背景に写しこまれていて、『計算』と言う言葉は似つかわしくないのかも知れませんが、まさに「The Complete Flowers」と言えるのでしょう。そのcompletedな構図が試行を尽くされた上に生まれたものか、はたまた直感的なものなのかは知る由もありませんが、そこに彼の美意識の全てが集約されています。
デパートの催事場としては、順路も工夫さえていて変化がありました。今回はカラーの写真も数点展示されていて、カラーのものを見たのは初めてでしたが、これも良かったです。

このチューリップ(1987年)は、彼自身が自分の余命を知った後に自身の生きた証として撮影されたものだそうです。メイプルソープは1989年3月9日に42歳の若さでエイズによりこの世を去っています。(1986年にエイズの宣告を受けたそうです。) 当時、ゲイカルチャーや性の解放運動をアートとして表現し後押しするような風潮がありましたが、メイプルソープもこの流れに乗っていたひとりだったそうです。そのゲイカルチャーの美意識が彼を早世させることになったのは、なんとも皮肉な話だと思います。


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by sanaegogo | 2013-02-08 00:00 | art | Comments(0)


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