石川直樹 異人/国東
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石川直樹 Ishikawa Naoki
異人/国東
石川直樹 × 瀬戸正人トークイベント
12月23日(日) 19:00~ @PlaceM

このブログでレビューを書き始めて、多分石川直樹は最多登場になるのではないかな、と思います。石川直樹の写真も好きなのですが、その語り口と言うか話をする時の口調と言うか、テンションが静かながらもはっきりとした物言いが好きで、結果、スライドショーやトークショーに良く出かけている気がします。「石川直樹の写真が好き」と言うのにもっと付け加えると、その写真を撮るまでの行為と言うか、それに臨む態度全てに惹かれるものがあります。写真自体は、単純な言い方で上手い・下手で語ると賛否両論あるのでしょうが、ひとついえるのは彼にとっての写真は探究心とそれを確認する行動の集大成としての写真であって、アーティスティックな意味合いはあまり重要でないのでは、と言う事です。数年前は確か、自分は写真家ではない、と言っていたと思います。気が付いたらいつの頃からか「写真家」と言う肩書きが彼に付けられるようになっていましたし、自分でもそう称していました。トークショー最後の質問コーナーで、その事を訊いてくれた人がいて、石川さんの答えは・・・・。『冒険と写真、と言うか記録は切っても切れないもので、昔はどんな冒険にも写真家を1人同行させていた。写真がない時代は画家を連れて行って、誰も行った事のない自分達の見て来た世界を記録して持ち帰った。僕にとってはそう言う意味での写真であって、好奇心の赴くものを調べ、行って確認して記録すると言うのは自然な一連の行為。』みたいな事を言っていて、なる程、腑に落ちました。なので、石川直樹の写真は、ただのスナップ写真のようにも見えるかも知れないし、(しかしながら被写体になるものが日常から突出しているので、決してそのようにはならないのだけど)、現代の生活が垣間見れるような部分をキレイにしないで、雑多なものが写り込んでいても構わずシャッターを切るところに、ある意味妙に臨場感が溢れているとも言えます。瀬戸さんに『鍋やガスレンジが写り込んでいるのを何とかしようと思わなかったのか。』と言うような、からかいにも似た突込みを受けても、何所吹く風のような感じだったのが面白かったです。閉鎖的な村の中だけで脈々と守られ受け継がれてきた古い祭事を撮影するので、シバリがあったり、自分の思ったように画をつくると言った行動パターンが取れない状況下での撮影だと言うのもその理由なのかも知れません。ともかく、そう言った石川直樹の行為全体が、ひとつの写真に向き合うスタイルとして、とても惹きつけられるのです。
さて今回は、石川直樹が予てから追いかけている「異人」を大分県の国東半島にて撮影した写真展に際して開催されたトークショーです。「異人」とはつまり「来方神」。海を渡って日本の沿岸に流れ着いた遠い彼方から来た神様です。国東半島に伝わるこの来方神を祭る祭祀儀礼を取っ掛かりに、石川直樹が追いかけている「異人」やその異人を象徴する「仮面」が登場する日本の南端・北端に伝わる儀礼をダイジェストに紹介しつつ、それに絡めてのトークが続きました。面白い事にそう言った海から流れ着いてきた異邦人(折口信夫が言うところの「まれびと」)をお迎えする祭祀が残っているのは九州より南と北陸東北地方で、山に隔てられた狭い生活地域の中で外の世界と繋がっていたのは海と言う地域が多いそうです。どちらかと言うと外界と自分達を隔てているのは海では無くて山だ、と言う感覚。海は隔てるものではなく続くものであり、島と島を繋げるもの、陸と陸を続かせるもの。これは石川さんのトークショーでよく聞かれますが、その海についての感覚は大いに共感できるものがあります。魏志倭人伝には、魏の先遣隊が『一海渡りて』と対馬の島々を渡り倭の国の邪馬台国に来た記述が残っている、と言っていました。『一海』とは島と島を繋ぐ単位のようなものとして表現されていて、異人もこの様なルートを辿って日本の村々にやって来たのでしょうね。しかしながらその村々は、ある意味メジャーな世界とは隔絶されていた訳で、だからこそそのような古い祭祀儀礼が現代まで受け継がれ残っているとも言える訳ですが、そう言う閉鎖的なコミュニティーで余所者が彼らの大切に奉っている来方神の祭りを撮影させてもらうにはさぞかし苦労があるに違いない、と。石川さんによると、やはり、お酒を持って現地に何度か赴き、自分がきちんと調べて臨んでいる事を伝え、コミュニケーションを取り、外部に公開していない祭りの全貌を写真に撮ることを許してもらうそうです。瀬戸さんは、そこまでが写真家の仕事のうち80%。あとは機会に臨んで撮影するだけ。と言っていました。そう言う意味では、石川直樹のあの真っ直ぐで押し付けがましくないけど正直で直接的な雰囲気は、受け容れられる事が多いのではないかな、と思います。
今回の「異人」のシリーズは、東北芸術工科大学から始まって、その後、新潟市の『水と土の芸術祭2012』など、今後日本列島の各地を巡回していくプロジェクトです。来年早々能登の輪島で「アマメハギ」の撮影を終えた直後、1月4日(金)金沢の21世紀美術館で再び「異人」について、何かを語るそうです。そう言う意味では、これも含め、写真展はその通過地点で、やがては日本に残されたこれらの来方神について、写真集に纏めるつもりだ、と語っていました。それは、きっと単なる民俗学の資料的な観点ではなく、現代の生活を背景とした、歴史の中で今現在の一場面を記録していくような、時間をなぞった結果の先端のような写真集になるのだと思われます。

石川直樹 テキスト: http://www.placem.com/schedule/2012/20121217/121217.html
東北芸術工科大学での『異人 the stranger』展示記録:http://blog.tuad.ac.jp/stranger/

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by sanaegogo | 2012-12-23 00:00 | activity | Comments(0)


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