大岩オスカール―Traveling Light @渋谷ヒカリエ
大岩オスカール(Oscar Oiwa)は、ブラジルのサンパウロで日系ブラジル移民の2世として生まれました。 画面いっぱいに広がるその色彩はそんな事に由来しているのかも知れません。2008年には東京都現代美術館などを巡回した初の個展『夢見る世界』(The Dreams of a Sleeping World)も行われていますが、この年は個人的に自分のステイタスに変化があった年なので、雑事に取り紛れていて観に行くことが出来なかったんです。いつか再び、と思いつつ今回その夢見る世界ではないにしても希望が叶って本当に嬉しいです。
と興奮気味に書き連ねてしまいましたが、ヒカリエで行われている 大岩オスカールの個展に行って来ました。

大岩オスカール ― Traveling Light
渋谷ヒカリエ 8F CUBE
2012年11月14日 ― 11月26日
11:00 ― 20:00

http://www.oscaroiwastudio.com/oscar_website/pages.html/keumsan/artfront.html

≪Seven White Flowers≫(2012)


ワタシの一番好きな画は、今回これです。 大岩オスカールというと明るいめの色彩なのだと思っていたのですが、(ベースが暗い場合でも明るい色がアクセントされているとか)、この『七つの白い花』(Seven White Flowers) はダークな色彩で紺色に染まる夜の街とその上空に浮かぶ雲の白さのコントラストに柔和な雰囲気の中にも見え隠れする不気味さを感じました。 この雲は自然現象で出来ている雲でしょうか? そうではないと思います。 それが都市に生きて都市での営みを俯瞰している大岩オスカールの世界なんだと思います。大岩オスカールが描くのは都市やコミュニティーを誰の目線なのか(神様、でしょうか?)、俯瞰して眺めている図です。 都市やコミュニティーでありながら、その画面には人影は一切無く、人の消えた街、人の気配だけが残る営みの風景が広がっています。都市の場面では地下のシェルターに潜ってしまったのか、寓話の世界のような場面では不意に現れた余所者をやり過ごすまでどこかに潜んでいるのか、いずれにしても、さっきまでそこに居たのに、突然何もかも放棄して、忽然とどこかに消えうせてしまったかのような雰囲気があり、それが、そのうっすらと漂う不気味さの根底を成しています。そしてその雰囲気はちょっとSFちっくでもあります。

e0168781_19242550.jpg未来都市。地球の進化・発展の常識から枝分かれしてしまったような樹上の都市。大岩オスカールが都市環境を多く描いているその理由は、彼がサンパウロ大学で建築を専攻していて、都市工学や環境についての素養を持っている事も大きいのではないでしょうか。Five Nestsに見られる樹上の都市やEarthscapeに見られる区画整理された共同体のような風景は、メタボリズムと呼ばれる建築運動を連想させます。社会の変化や人口の成長に合わせて有機的に成長し変化する都市、と言うのがその概念ですが、海上都市や持続可能なエネルギー共同体の村など、成長し新陳代謝する巨大都市に通じるような世界がオスカールの画の中にはあります。

今回の展覧会では今年(2012年)の作品を中心に展示されているようですが、ご本人は毎年何枚もの新作を精力的に制作しているとても勤勉な方だそうです。(しかも、大作ばかり!)(このSeven White Flowersも2012年制作のものです。) 展示されていた作品の中では、Swir(渦)やRescue Boat(救助船)など、陽差しや灯りを全く感じさせないよう画面、大きな渦の中に飲み込まれてしまいそうになっているその状況、また、Mr. Night のように忍び寄る得体のしれない何かの出現など、ここ数年の閉塞した世の中を敏感に感じ取っているようにも思え、その明るく柔らかなPeacefulな色合いの画とのふり幅がすごい。 近年の世情を敏感にOutputしている、とも言えるかも知れないし、彼がブラジル生まれのブラジル育ちという事を考えると、同一人物から産みだされたにも関わらず、この明と暗のコントラストとその振り幅は、光と影の国とも言われるブラジルで培われた二様性がそうさせているともいえるのかも知れません。

ヒカリエなので、点数は少なめでしたが、とても満足しました。アートフロントギャラリーの方は12月2日まで開催されていて、旧作も観られるようですので、是非こちらにも足を運んでみようと思います。

  

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by sanaegogo | 2012-11-23 00:00 | art | Comments(0)


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