『ヴィデオを待ちながら』
例えば、自分自身で展覧会とかを開く場合、観て感じてほしいテーマをそのタイトルの中にどうやって盛り込んで、どうやって表現するか。こんな事を考えてるとなかなか面白い。これって写真や絵を作品として観てもらう時も、同じことが言えるんじゃないかな。そういう意味では、"Waiting for Video: Works From the 1960s To Today"と言うタイトルは、『何々? 一体どういう事?』とちょっと面白そう、と言う好奇心を掻き立てられる感じがする。邦題は、『ヴィデオを待ちながら 映像、60年代から今日へ』。英題の方が何となくピンと来ますが、"ヴィデオを待つ"ってどういう事だろう。デジタル映像が氾濫している今だけど、一体"ビデオ"って何ぞや。と、軽くウィキッてみると、古くは映像の処理技術とその装置。今では、装飾的に色々な技術的名称と結びついていて、意味合いが広がった分、じゃあ、ビデオって何? と言う単純な疑問には答えられ難くなっているようだ。そんな発展してしまった最先端の時代に、ただの記録装置だった"ヴィデオ"を待ってるって?
しかし、映像作品が世の中に氾濫している今でこそ、当時それを自分の表現メディアに使ってみようと試みた人々の作品から立ち返ってみよう、と言うのがこの展覧会の趣旨のようです。

芸術作品って(ここでは平面作品の事ですが)、技術と意外と深く関わっているんですよね。自分の見たまま物や情景を2次元の中に忠実に再現したい、と言う動機は透視図法やカメラオブスクラなどを生み出して、そんなものに始まってやがて具体的なものではなく、印象や心象を表現するようになって、ビデオ撮影と言う技術が開発されて時間的なスパンも扱えるようになってからは、その表現のプロセスそのものを時間をかけて観せるようになって、でも世の中に本当に多様なメディアが氾濫している今となっては、そんな事を体系だてて考えるのは、素人にとっては本当に至難の業、と言った感じです。
でも、この展覧会を観ると、このとっ散らかってしまったものを目の前にして、途方にくれるような気持ちになる反面、端っこの方から少しずつでもこのもやもや感を解消したい、と言う気持ちにもなってきます。実際に作品を観てみると、作品そのものにもこのもやもや感が満ち溢れていて、試行錯誤のプロセスが繰り返されてるけど、結論は、"ない"、と言うものが沢山あって、観終わっても納得が行くような、何か答えまで提示しているような作品はなく、もやもやもや~っとかなり長い時間をかけて全部を周っってきました。と言うか、答えを今ここで、性急に無理やり出す必要もないんでしょうねー。

e0168781_2118177.jpg そんな中でも、思わず夢中になって観てしまい、そして笑っちゃったのがこれです。


フランシス・アリス
(ラファエル・オルテガとのコラボレーション)
《リハーサル1》
1999-2004年
Courtesy the artist and Galerie Peter Kilchmann, Zurich


オーケストラの進行状況(?)に応じた、この赤いビートルの動きがもう、サイコーです。コミカルな映像なんだけど、映像と音のシンクロが緻密に合わせてあって、そして、これも終わりがなく続き繰り返される。"メキシコの近代化を表現している"との事だけど、私にとっては『一体何を言おうとしているのか。』なんて言う、深いところまで汲み取ろうと頑張らなくても楽しめる一服の清涼剤でした。

難解ならば別に観に行かなければいいんじゃん、と言う人もいるだろうが、ついつい気になってしまう、と言うのが、ま、本音でしょう。思えばずっと前もありましたね、こんな風な時期が・・・・。あれは、大学生になりたての頃、『訳が判らないけど、ついつい観にいって、終わった後にもやもや感を残して帰る』と言うことが。 (あの当時は映画でしたけど。) 勝手にしやがれ(1959) 気狂いピエロ(1965) ドクトル・ジバゴ(1965) 2001年宇宙の旅(1968) 時計じかけのオレンジ(1971) 惑星ソラリス(1972) など(くらいしか、今はぱっと出て来ないけど。)、訳も解らず、解らないまま、劇場に足を運んだなぁ。今にして思えば、多感な大学生としては"歴史を作った巨匠作品を観たぞ"感を味わいたかったんでしょうね。そして背伸びをしてうっすらと疲労感。でも、今のこの感じととっても似ているような感覚。 この展覧会で出されたナゾナゾはそうそうは解けないとは思うけど、謎をかけられに足を運んでみるのもまたご一興。 楽しみにしてたアンディ・ウォーホル作品は、長かったけど、イーディはとてもキュートでした。 あの長回しに怖気づかず、心乱されつつも果敢に話し続ける個性はあっぱれ・・・・。

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by sanaegogo | 2009-04-04 00:00 | art | Comments(2)
Commented by Frida at 2009-04-10 10:27 x
やっぱりアリスのは秀逸でしたよねぇ。
他の作品に比べて難解ではないというコンセプトに加え、
唯一音楽との合わせ技だったところが
印象を強烈にしているんじゃないかと(個人的には)フンでいます。

そうそう、アンディ・ウォーホールを扱った映画は
「Factory Girl」でした。
2006年の映画だけどこれは日本ではDVDのみなのかな…。
Commented by さなぁえ at 2009-04-10 19:51 x
>Frida
「Factry Girl」日本でも封切られたみたいですよ。
アリスの映像、YouTubeで探してみたけど、さすがになかったわ・・・・。
秀逸な作品でも発表の場で認知のされ方が違っちゃうのも、面白いよねぇ・・・・。
タンゴの調べ、思い出せそう? 覚えてたかったのに、思い出せないっ!


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